ビジネスの世界では、同じ業務をしているにもかかわらず成果が安定しない人が多くいます。営業でも企画でもマネジメントでも、一度目はうまくいったのに、二度目は結果が出ない──誰もが経験する現象です。 しかし、一部の人はこの壁を軽々と越えていきます。環境が変わっても成果を出し続け、配属先が変わっても同じように結果を残し、新しく挑戦した領域でもすぐに成果をつくる。この「再現性のある成功」を手にした人は、成長曲線がある瞬間から跳ね上がります。 今回は、成功の再現性がキャリアと組織にどのような“加速度”をもたらすのか。そして、なぜ再現性の有無が未来を決めるのかを解説します。
成長を加速させるのは、ARISEの“中核”にある構造理解
本連載で取り上げている ARISEモデル は、成功を再現可能な構造に変換するための思考プロセスです。
- A:Analysis(成功の分解)
- R:Recognition(事前期待の構造を読み解く)
- I:Implementation(再現の型をつくる)
- S:Simulation(小さく試す)
- E:Expansion(横展開する)
この中でも特に成長速度を決定づけるのが、Recognition(事前期待の理解)と Implementation(型づくり) の2つです。事前期待の構造を理解することで、成功の原因を精密に抽出できるようになります。そしてその原因を“型”として定着させることで、相手や場面が変わっても成果を再現できる。この瞬間から、成長は加速度を持ち始めます。
個人だけでなく、組織も“跳ねる”
再現性は個人の成長だけではありません。組織にとっても大きな意味を持ちます。再現性がない組織では、価値が特定の人に依存し、誰かが辞めるだけで成績や品質が大きく落ちます。
しかし再現性のある組織では、価値提供の構造が共有されるため、誰でも成果が出しやすくなり、育成効率が高まり、顧客体験が安定します。
つまり再現性は、個人の武器であると同時に、組織の持続的な成長を支える“土台”でもあるのです。
成功の再現性は、未来のコントロール権を手にすること
成功の再現性を手にした瞬間、キャリアは「たまたまの連続」から「コントロール可能な未来」へと変わります。再現性とは、成功を偶然の産物として消費するのではなく、因果として理解し、構造として定着させ、状況に応じて使い分けられる力です。
個人は自信を深め、組織は価値提供を安定させ、事業は持続的に成長できるようになります。
その起点にあるのは「事前期待の構造」
成功の再現性を高める鍵は、結局のところ相手の“事前期待”がどう動いたのかを読み解く力です。この事前期待構造を扱うための体系が、
書籍『事前期待──リ・プロデュースからはじめる顧客価値の再現性と進化の設計図』
で解説されています。事前期待という視点は、成果の安定化、価値の再現性、組織の持続的成長、個人のキャリア加速の協力な起点になるでしょう。
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2015.07.10
2009.02.10
サービスサイエンティスト (松井サービスコンサルティング)
サービスサイエンティスト(サービス事業改革の専門家)として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。 【最新刊】事前期待~リ・プロデュースから始める顧客価値の再現性と進化の設計図~【代表著書】日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新
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