成長曲線が跳ねる瞬間──「成功の再現性」がキャリアと組織を加速させる

2025.12.16

経営・マネジメント

成長曲線が跳ねる瞬間──「成功の再現性」がキャリアと組織を加速させる

松井 拓己
サービスサイエンティスト (松井サービスコンサルティング)

ビジネスの世界では、同じ業務をしているにもかかわらず成果が安定しない人が多くいます。営業でも企画でもマネジメントでも、一度目はうまくいったのに、二度目は結果が出ない──誰もが経験する現象です。 しかし、一部の人はこの壁を軽々と越えていきます。環境が変わっても成果を出し続け、配属先が変わっても同じように結果を残し、新しく挑戦した領域でもすぐに成果をつくる。この「再現性のある成功」を手にした人は、成長曲線がある瞬間から跳ね上がります。 今回は、成功の再現性がキャリアと組織にどのような“加速度”をもたらすのか。そして、なぜ再現性の有無が未来を決めるのかを解説します。

成功は“偶然”、成長は“再現”。

まず前提として、強調したいのは「成功はたいてい“偶然”。成長は必ず“再現”」です。一度の成功には、相手との相性、タイミング、運、事前期待との偶然的な一致など、本人のコントロール外の要素が多数含まれます。そのため、一度できただけでは実力とは言えません。しかし、二度目、三度目の成功には、必ず理由があります。そこに含まれる因果関係──「事前期待 × 行動」──を理解できたとき、成功は偶然ではなく“再現可能なもの”へと変わるのです。

多くの人が成功を再現できない理由

ほとんどのビジネスパーソンは、成功を“出来事”として扱います。成功したらうれしい、失敗したら落ち込む、しかし理由は深掘りしない。すると、成功も失敗も運・相性・経験値など“なんとなくの要因”とみなされ、コントロール不能な世界で戦うことになってしまいます。

成功の背後には、必ず因果があります。ある相手には刺さったのに、別の相手には刺さらなかった理由。すぐ契約につながったケースと、時間がかかったケースの違い。自信を持てた瞬間と、不安が大きかった瞬間の差。こうした構造を見にいかない限り、成功は偶然のまま消費され、再現性は手に入りません。

再現性を持つ人は、成功を“素材”として扱う

伸び続ける人は、成功を“素材”として扱います。

「なぜこの行動が相手の事前期待に合ったのか」
「どの言葉が相手の認識を変えたのか」
「なぜこのタイミングで相手が動いたのか」

といった要素を、成功の中から抽出します。

彼らは、成功した瞬間に“構造”を探しはじめます。成功を喜ぶだけでなく、どの事前期待を満たせたのか、どの事前期待を裏切らなかったのか、そしてその一致がどのように価値へ変わったのか。

この分析によって、成功は“再現可能な引き出し”へと転換され、相手が変わっても状況が変わっても応用できる資産になります。

成長曲線は“直線”から“曲線”へ変わる

多くの人の成長は、

「経験 → 挑戦 → たまに成功 → 失敗しながら学ぶ」

という一本道です。これは堅実ではありますが、成長速度はゆっくりです。

一方、再現性を身につけた人は違います。成功の背後にある事前期待構造を読み解き、それを別の場面でも使えるように“構造化”します。その結果、

「経験 → 成功の分解 → 因果の理解 → 別領域での再現 → 成果の加速」

という流れに変わり、成長は曲線を描き始めます。努力量は同じでも、成果の出方がまったく異なります。

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松井 拓己

サービスサイエンティスト (松井サービスコンサルティング)

サービスサイエンティスト(サービス事業改革の専門家)として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。              【最新刊】事前期待~リ・プロデュースから始める顧客価値の再現性と進化の設計図~【代表著書】日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新

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