属人化を終わらせて再現性を手にする方法──成功を分解する「ARISEモデル」

2025.12.04

経営・マネジメント

属人化を終わらせて再現性を手にする方法──成功を分解する「ARISEモデル」

松井 拓己
サービスサイエンティスト (松井サービスコンサルティング)

成果が人によってバラつく──これは多くの企業が抱える永遠の課題です。同じ研修を受け、同じマニュアルがあり、同じ戦略を掲げているはずなのに、優秀な人だけが突出し、平均値が伸びない。こうした属人化は、組織にとって静かだが確実に効いていく“構造的な損失”です。

型はつくっただけでは機能しません。現場で小さく試し、調整し、精度を上げていく必要があります。Simulationの目的は「机上の空論」を避け、事前期待との一致度をリアルな場で確認することです。

ほんの小さな試行で十分です。数人の顧客、数回の提案、短い接点。そこで「事前期待にフィットしたか」「ズレたか」を検証し、微修正を重ねていきます。このプロセスを挟むことで、再現の型は実戦レベルへと引き上げられます。

E:Expansion──横展開し、組織の“再現力”に変える

最後のステップは、型の組織化です。ここまで来て初めて属人化が解消されます。成功した個人の感覚ではなく、事前期待のパターンと行動のパターンとして共有されるため、誰が実行しても一定の成果が出るようになります。

つまり、ARISEの最終形は「成功が個人のものではなく、組織の資産になる」という状態です。属人化組織と再現性組織の差は、ここで決定的に開きます。

ARISEが組織にもたらす“最大の効能”

ARISEの強みは、行動の改善ではなく、“事前期待という見えない構造”を扱っていることです。これによって以下のメリットが生まれます。

  • 成果のバラつきが減る
  • 優秀な人が辞めても品質が落ちない
  • 新人でも“事前期待を読む力”を早期に持てる
  • 市場や顧客の変化に強くなる
  • 組織の成長曲線が跳ねる

行動はコピーできますが、事前期待はコピーできません。だからこそ、事前期待を構造として扱える組織が勝ちます。

第3回予告:なぜ同じ行動でも評価が変わるのか──事前事前期待の設計術

次回は、「事前期待は変えられるのか?」「事前期待を先に設計すると評価はどこまで変わるのか?」をテーマに掘り下げます。行動を変えるだけではなく、“相手の事前期待そのものを設計する”というアプローチに踏み込みます。

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松井 拓己

サービスサイエンティスト (松井サービスコンサルティング)

サービスサイエンティスト(サービス事業改革の専門家)として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。              【最新刊】事前期待~リ・プロデュースから始める顧客価値の再現性と進化の設計図~【代表著書】日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新

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