戦略を語る場では「仮説思考」や「まず仮説から始めよ」という言葉が頻繁に使われる。しかし、仮説を立てることと、仮説を検証しながら学びを蓄積することは似て非なる営みである。連載第7回となる本稿では、「仮説を検証しない」現場の実態と、その背景にある心理、そして検証を端折ることで組織に生じる不具合について考えてみたい。
このように仮説検証を避ける組織は、一見すると動いているが、実態は同じ場所を走り続ける“ランニングマシン”のような状態に陥る。前に進んでいる風ではあるが、景色は何も変わらない。戦略プロジェクトが量的には積み上がるが、質的な転換点を迎えることがなく、組織内には「何か変化を起こしているはずなのに手応えがない」という空疎感と疲労感だけが残る。
では、仮説検証が組織文化として根付いたとき、戦略プロジェクトはどう変わるのか。
検証とは、誰かを責めるための装置ではなく、「うまくいかなかった事実を資源に転換するための仕組み」へと位置づけ直される。プロジェクトは、成功・失敗という二元的評価から解放され、「何を学び、次にどう活かせるか」という連続的な進化プロセスとして再設計される。
仮説検証が呼吸の如く当たり前に機能し始めるとき、組織は初めて“学習する戦略単位”へと姿を変えていくのである。
経営・事業戦略
2025.01.22
2025.03.05
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2025.10.20
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
「世界的戦略ファームのノウハウ」×「事業会社での事業開発実務」×「身銭での投資・起業経験」。 足掛け38年にわたりプライム上場企業を中心に300近いプロジェクトを主導。 ✅パスファインダーズ社は大企業・中堅企業向けの事業開発・事業戦略策定にフォーカスした戦略コンサルティング会社。AIとデータサイエンス技術によるDX化を支援する「ADXサービス」を展開中。https://www.pathfinders.co.jp/ ✅第二創業期の中小企業向けの経営戦略研究会『羅針盤倶楽部』を主宰。https://www.facebook.com/rashimbanclub/
