“完璧な正解”が、部下の成長を奪うとき  ― 教える力ではなく、育む力が未来をつくる ― 共鳴型リーダーシップ3話

2025.09.08

組織・人材

“完璧な正解”が、部下の成長を奪うとき ― 教える力ではなく、育む力が未来をつくる ― 共鳴型リーダーシップ3話

齋藤 秀樹
株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事

“完璧な正解”が、部下の成長を奪うとき 「部下から質問されたら、すぐに答えられるのが上司の役目だ」 かつての現場では、こうした“指導力”こそがリーダーの資質とされていた。 だが、今この「即答力」が、部下の思考と挑戦心を奪ってしまうケースが急増している。

「どう思う?」

「なぜ、そうした?」

「次はどうしたい?」

――これらは単なるコミュニケーションではない。

「君には考える力があると、私は信じている」というメッセージなのだ。

問いかけを通じて、部下はこう思う。

「この人は、私の考えに価値を置いてくれている」

「私がどう考えるかを大切にしてくれている」

その瞬間、部下は“受け身の存在”から、“意思ある人”へと変化する。

問いは、信じて任せるという「覚悟の行為」である。

リーダー自身の勇気が、部下の可能性の扉を開く。


問いの技術:信頼を育て、思考を促す言葉のかけ方

以下に、具体的な「問いかけのフレーズ」を場面別に整理します。

業務の振り返りを促すとき

  • 「どこがうまくいったと思う? なぜそうなったと思う?」
  • 「何が難しかった? それはどこから来てると思う?」
  • 「次に活かすとしたら、何を変えたい?

意思決定を委ねるとき

  • 「いくつか選択肢があるけど、君ならどう考える?」
  • 「最終的に、何を大切にしたい?」
  • 「それをやると、誰が嬉しいと思う?」

モチベーションや内面を引き出すとき

  • 「この仕事で、どんなことにワクワクする?」
  • 「最近、自分の成長を感じた瞬間は?」
  • 「あなたにとって“いい仕事”って、どんなもの?」

補足ポイント:問いには「空白」が必要です。

急かさず、沈黙を味方にすることで、思考が深まり、信頼が育ちます。


明日からできること:小さな問いを習慣にする

【問いかけマネジメント 3ステップ】

Step 1「すぐ答えるクセ」に気づく

  • 1日に1回、自分の返答を「問い」で返してみる

Step 2「問いの型」を手元に置いておく

  • 業務振り返り/意思決定/モチベーション の3場面で使うフレーズ集を準備する

Step 3「問い+沈黙」を怖がらない

  • 考える時間を渡す → 部下の沈黙は、思考の証


自己マネジメントの問い(振り返りワーク)

  1. 最近、自分が「問いではなく答え」を押しつけてしまった場面は?
  2. 自分の問いかけは、部下の“内側”に届いていただろうか?
  3. 自分は部下の「可能性を信じて任せる」ことができているか?


終わりに “問いを贈るリーダー”が育てる未来

これからの時代に求められるのは、

命令する上司ではなく、「共に問い、共に育つ」リーダーである。

そして、問いとは、相手の存在を深く信じていなければできない行為だ。

だからこそ、問いは育成の手段であると同時に、リーダーの人格を映し出す鏡でもある。

どんなに正しい答えよりも、

「あなたはどう思う?」と問うその一言が、誰かの未来を変えることがある。


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齋藤 秀樹

株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事

富士通、SIベンダー等において人事・人材開発部門の担当および人材開発部門責任者、事業会社の経営企画部門、KPMGコンサルティングの人事コンサルタントを経て、人材/組織開発コンサルタント。

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