孤独になりがちな子育てお母さんの見方として、活動を続けられている、日本子育てアドバイザー協会の小谷野さんに、お母さんたちを助けたいという想いをお聞きしました。(聞き手:猪口真)
将来は警察署にアドバイザーを置いてもらいたい
猪口 今では多くの企業は働く母親を受け入れて、仕事と子育てを両立する方が増えているので、子育てアドバイザー協会さんのような活動はとても重要だと思います。企業とのタイアップや、企業からのオファーもあるのでしょうか。
小谷野 ある出版社からアドバイザーを定期的に送ってほしいという依頼がありました。時間が不規則な仕事なので両立するのがどんなに大変か以前から分かっていたので、会社には精神科の医師が常駐しているのに、誰も行きたがらない、それは心を病んでいるのではないかと同僚に思われるのが嫌で、行く人がいなかったというお話を伺って、悩みは病気ではないですよ、でも病気になる前に話を聴いてもらいましょうと、伝えたところ、アドバイザーを定期的に派遣しました。男性も女性も仕事の合間に相談に来ていました。
猪口 男性も来られるんですね!
小谷野 いらっしゃいますね。例えば、小さい子がいるお父さんは、「お手伝いをしようとしたら、奥さんが「お手伝い」という言葉に反応してすごく嫌がって、「やるのが当然でしょう」と言われ、何をやっても違うと否定されてしまう」とお悩みでした。私たちは悩みを傾聴することを大事にしているので、アイデアを出したり、ヒントをあげたり「こうしたらいいのではないですか」といったことは言うのはまれですが、男性の場合にははっきりと言ったほうが納得してもらえます。また感情をあまり出さない人でも、大変さを理解し、ねぎらいの言葉をかけるとウルウルされたそうです。
仕事の合間のたった数十分話を聴くだけなのですが、本音を言えてとてもスッキリした顔で帰られました。
猪口 話を聞いてもらっている間に自信を取り戻して、大丈夫だ、自分でもできそうだと、お顔が生き生きしてくるのでしょうね。20年以上この活動をされてきて、時代の変化やお母さんたちの価値観の変化は感じられますか
小谷野 今は情報がとても簡単に入ります。それでもなおアドバイザーに相談に来るということは、自分の子育ての仕方がこれでいいのか確認したいのと、自分の子どものことをもっと聞きたい、知りたい。「子どもが他の子と違うのですが、これでいいのでしょうか?」「うちの子はこうなんだけど、どうですか?」と聞かれます。皆さん、子どもの成長発達のことも勉強されていて、よくご存じです。中にはプロになれそうな人もいます。
悩みや不安、恐れというのは、子ども、旦那さんがこうだからということではなく、自分自身の中に存在している何かがあるのだと思います。自分がそれに固執してしまったり、真面目に取り組みすぎてしまったりする。実はそれが悩みの根源なのかもしれません。それを引き出して差し上げる。「小さい時はどうでしたか? お母さまはどうでしたか?」と、成育歴を話していくとよく分かるそうです。私たちは何もアドバイスしなくても、お母さんの話を受容と共感で聞いていくと、どんどん話してくれます。
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