物流2024年問題の解決に向けて物流各社の改善努力は続いているが、抜本的な解決のためには業界再編による体力アップとネットワークの拡大しかないのではないか。
また、ドライバーに荷積みをさせる荷主がまだまだ多いのが実情だが、本来である「荷主側が荷積みをする作業員を確保する」ことで、ドライバーの作業時間を減らして運転に集中させる取り組みに協力するまともな荷主も現れてきている。
それでも大きな課題としての「荷待ち時間」問題*は、物流センターの大幅改修と予約・連絡システムの刷新が求められるため、解決できていないところが大半だ。
* 積み込み・荷下ろしの順番待ちのために荷主や元請け会社の物流センターで長時間待たされる実態があり、結局トラックで走る時間が削られているという問題のこと。
一番肝心なこととして、トラック事業者は、確実にコスト増になるのを運賃価格に転嫁できるよう、荷主企業(および元請け会社)との間で交渉を進めてきている。しかし全般的に荷主-運送会社の間での力関係は圧倒的に前者が強く、大手事業者を除いて全体的にはなかなか価格転嫁は厳しいのが実情のようだ。
個々のトラック事業者の努力でコスト削減できる余地はかなりやり尽くしており、それでも新たに課された労働時間制約の下で今の物流量を捌き切るためには、あとは「業界再編」を大胆に進めるしか現実解はないのではないか。
今の「運送会社に対し荷主が圧倒的に有利な交渉力を持つ」構図になっているそもそもの原因は、1990年にいわゆる物流2法(貨物自動車運送事業法・貨物運送取扱事業法)が施行されて経済的規制が大幅に緩和されたため、小さな事業者が増え過ぎたことにある。
そして彼らの大多数は大手・中堅事業者の下請けに入り、この業界での多重下請構造が成立した。そしてその構造下では小さな事業者はピンハネされた運賃しか受け取れず、しかも十分な荷量を確保できない中小事業者は価格ダンピングで仕事を確保する策しか思いつかない。
供給余力が一挙に増えたため、無茶な条件を平気で提示し、「嫌なら他に頼むけど、いいの?」と高圧的な振舞いをする荷主や元請運送事業者がむしろ一般化してしまったのだ。実際のところ、荷主企業の物流部門といえば「いかに運送会社を叩いて物流費を削減できたか」で評価される時代がずっと続いてきた。
そのしわ寄せが下請事業者の各ドライバーに対し、不当に安い賃金での長時間労働という形で及んでいたのがこれまでの業界実態だ。
だから今回の「2024年問題」を解決しながら運送会社がまともな経営で利益を出し、ドライバーが人並みの生活をできるようになるための解決策は、ズバリ「業界再編」しかないと考える。
社会インフラ・制度
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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
パスファインダーズ社は少数精鋭の戦略コンサルティング会社です。「新規事業の開発・推進」「既存事業の改革」「業務改革」の3つを主テーマとした戦略コンサルティングを、ハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/ 弊社は「フォーカス戦略」と「新規事業開発」の研究会『羅針盤倶楽部』の事務局も務めています。中小企業経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashimban/ 代表・日沖の最新著は『ベテラン幹部を納得させろ!~次世代のエースになるための6ステップ~』。本質に立ち返って効果的・効率的に仕事を進めるための、でも少し肩の力を抜いて読める本です。宜しければアマゾンにて検索ください(下記には他の書籍も紹介しています)。 https://www.pathfinders.co.jp/books/