ターニングポイントが必要なのは、現役世代も高齢者も同じ。

2024.06.10

ライフ・ソーシャル

ターニングポイントが必要なのは、現役世代も高齢者も同じ。

川口 雅裕
NPO法人・老いの工学研究所 理事長

クランボルツのキャリア理論から、高齢期を考えてみる。

また、「何十年も前からの友人が高齢期になっても近くにいて、今でも一緒に楽しんでいる」というようなケースはあまりありません。何らかの事情で離れ離れになり、「年賀状だけ」とか「たまに連絡するくらい」といった関係になるのが普通です。

こういった状況を放置して、代わり映えしない日々を過ごすには高齢期は長すぎるわけで、高齢期にもやはり、ターニングポイントとなる偶然の出来事や出会いは欠かせません。

筆者は多くの高齢者を取材してきていますが、楽しそうな人たちを見ていると、高齢期に入って新しい友達、場、活動と巡り合った人がかなり多いように感じます。

趣味やスポーツの会に参加している人、ボランティアなど地域活動に取り組む人、そのほか活動的に暮らしている人たちに話をうかがうと、そのきっかけは、だいたい高齢期に入ってからできた仲間によるものであるようです。また、高齢者住宅に住み替えた人の話を聞くと、「新しい仲間や場を求めて」という目的の人も多くいます。

「時間を持て余さないように、やりたいことや生活スタイルを決めて高齢期を迎えよう」「高齢期を迎える前に、趣味など何か没頭できるものを持とう」という話をよく聞きますが、これは計画を重視する“キャリアデザイン”と同じ発想です。もちろん、計画を立てるのは悪いことではありませんが、実際には、「計画を立てれば楽しい高齢期になる」という単純なものではないでしょう。職業人生において、目標や、なりたい姿とそれまでのプロセスを綿密に計画しても、その通りになる可能性がほとんどないのと同じことです。

それまでの人生と同様、長い高齢期には偶然の出来事による転機が必要です。高齢期は、何もしなければ徐々に人との関係や場を失っていく傾向にありますから、若い人たちよりもさらに、その必要性を認識しておいた方がよいでしょう。偶然の出会いや出来事が起こりやすい環境に身を置いているかどうかを、「終活」の一つに加えてみるのもいいと思います。


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川口 雅裕

NPO法人・老いの工学研究所 理事長

高齢期の心身の健康や幸福感に関する研究者。暮らす環境や生活スタイルに焦点を当て、単なる体の健康だけでなく、暮らし全体、人生全体という広い視野から、ポジティブになれるたくさんのエビデンスとともに、高齢者にエールを送る講演を行っています。

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