前回は「残念なDXからいかに抜け出すか DXにはマーケティングが欠落している?」(https://www.insightnow.jp/article/11950)と言うテーマでお話しいただきましたが、今回は、実際にDXソリューションを提供されているDHH合同会社 CEO藤川秀行様をお迎えし、DXの誤解と一向に進まない原因についてお話をうかがいました。
富士 先日、藤川さんのところで中小企業を支援する団体が主催する展示会に参加するお話があって、お客様の声を聞ける良い機会だと思い、金森さんと私も同行させていただきました。そこで人気だったのが業務系のアプリです。来場者は「とにかく聞いておかなきゃ」くらいのノリなのではないかと感じました。さらに、セミナー会場で行われた「DXとは何か」がテーマの基礎的なセミナーが一番人気だったのです。DXが騒がれ始めて7年以上になるというのに、いまだにこのようなセミナーが満席になっていてはだめですよね。日々進化しているデジタル技術の中で、スピードが大切です。われわれが思っている以上に現実のギャップを感じました。
仕事をどう変えようか、どうすれば儲かるか考えている人たちはすでに動き出しています。しかし、まだ多くの会社ではまだ「とりあえず勉強しておくか」くらいのノリなのだと感じました。
「もっと顧客を見ろ」
猪口 課題を持っていない人に対しては非常に難しいアプローチになると思うので、そこでDXの可能性を含めた解決策を提示しながらやっていかれると思いますが、その辺はいかがですか。
藤川 今は電話が鳴っているところへのアプローチがまず一つです。オフィスの電話にしてもコールセンターにしても、逼迫する状況になる前に、人が対応して何とかなってしまっているのが現実です。それが当たり前になって、本当に困っている状況にまでなっていないのだと思います。一方、自分たちの製品や商品サポートのために構築しているインハウスのコールセンターはリアリティがあって課題感が高いので、そういったところにターゲットを変えてアプローチをしていくのも一つだと思っています。
猪口 僕の仕事で携わった物流センターの話と似たところがあります。物流センターでは人手不足になっているのに、日本人は優秀で人間の手でできてしまうそうです。それで経営者も、できているならとやらせてしまう。しかし本当は、ロボットやAIができることは人間がやらずに、優秀な方々にはクリエイティブな別の仕事をしてほしいわけです。そうしていかないと生産性が上がりませんよね。藤川さんが提供しているソリューションはまさにそういうものですよね。
富士 日本で働き方改革がなかなか進まなかったのも、「日本人は真面目で、アメリカ人がつらいと思うような仕事でもつらいと考えない」のですよね。つらいと思えば改善しようとなりますが、つらいとか面倒くさいとか言いにくい雰囲気がある。また「もっと楽しよう」と言う人があまりいないので合理化されない。なおかつ「手や体を動かしていないと遊んでいると思われるから、無理にでも手や体を動かしてしまう」そういった文化が強いので、体を動かさない思考業務が評価されにくく、考えなくなるという致命的な問題があります。私もよく若いころに工夫する方法を考えていたら「考えてないで手を動かせ」と言われたものです、ダメな時代でした、これでは課題に気づけないので、ソリューションやDXが進むはずがないでしょう。
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残念なDX
2024.01.31
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