前回は「残念なDXからいかに抜け出すか DXにはマーケティングが欠落している?」(https://www.insightnow.jp/article/11950)と言うテーマでお話しいただきましたが、今回は、実際にDXソリューションを提供されているDHH合同会社 CEO藤川秀行様をお迎えし、DXの誤解と一向に進まない原因についてお話をうかがいました。
猪口 まずは9時5時で受注センターを動かしているとしたら、それを24時間にしたら1.5倍になるかもしれないという発想からですよね。
富士 そうなのですが、今はその「営業時間外は対応しないのが常識化されている」ので、DXにより「人以外の方法で対応する方法もあるかも」という発想にたどりつかず、人が対応できないから無理で終わってしまいます。一番大切なソリューション発想まで行き着かない。
猪口 今日の「残念なDX」のテーマのひとつは「課題への転化ができていない」ですね。
富士 人が「課題認識がある」かなのか、そもそも課題が「認識される課題」なのか。ポイントは人なのか課題なのか、どの言い方をするのが正しいかまだ整理がついていませんが、そこに問題があると思います。もっと言うと、「見えるものでしか話をしていないからDXが進まない」というのが私の課題提起です。
「音声」の可能性を探る
猪口 藤川さんは音声のデジタル化、音声を使ったDXの可能性はどこにあるとお考えですか。
藤川 決められたフローで決められたシナリオを捌いていくのがDECIBELなので、チャットGPTを使ってQ&A、チャットボット的な利用もあると思っています。例えば、証券会社や銀行の機関のQ&Aは凄まじい量で、検索して探すことができるようになってはいますが、たどり着くまで非常に大変です。チャットGPTを一回かませて、例えば「口座開設に必要な書類は何ですか」と言えば、データベースの中からQ&Aを引っ張ってきて、その時点でウェブから返すこともできますし、それを音声に変えて伝えることもできます。
猪口 そういう意味では、ウェブ上にたまっているありとあらゆるデータの中から、どう見つけ出して伝えるかというところに音声の活躍が相当ありそうですね。
藤川 「どう整理してどう伝えるか」だと思っています。実現はしなかったのですが、以前、ある自治体から、障がい者の方向けの行政サービスの一環として、例えば聴覚や視覚に問題がある方に対して、障がい者の定義や受けられるサービスを案内したいというお問い合わせを受けたことがありました。行政サービスは広く、1問1答でも難しいほどです。そういったものを読み込ませて学習することによって、自治体の行政サービスとしても使っていただけるようになります。これはやはり音声でしかできないことですね。
金森 先ほどの課題化していないという話でいうと、自社にはこのような技術があり、自社で足りない技術は外から持ってきて、その技術を使うことでどのような「機能」が提供できるか、というところがまず考えられます。一方で、市場にはどのようなニーズがあるのか、そのニーズはどのような「価値」を求めているのか、というところがある。そうすると、「機能と価値をうまく橋渡しすること」が肝で、そこがうまくつながると課題が顕在化するはずです。これはMTFというフレームワークで、マーケット、テクノロジー、ファンクションをつなぐことが重要なのです。
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残念なDX
2024.01.31
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2024.05.20