前回は「残念なDXからいかに抜け出すか DXにはマーケティングが欠落している?」(https://www.insightnow.jp/article/11950)と言うテーマでお話しいただきましたが、今回は、実際にDXソリューションを提供されているDHH合同会社 CEO藤川秀行様をお迎えし、DXの誤解と一向に進まない原因についてお話をうかがいました。
富士 この領域は高齢化社会などを考えると、今後まだまだ成長していくと思いますが、現在の注目度という点では音声よりもAIがキーワードになっています。音声のデジタル化に関してはあまり普及している気配がないですよね。藤川社長もいろいろなチャレンジをされているので、今日はそのあたり少し深掘りできればと思います。
猪口 音声というと、一見アナログのイメージですが、どのような理由で取り組まれたのでしょうか。
藤川 音声の技術、API(接続先のOS、アプリケーションやウェブサービスをつなぐインターフェース)があったからというのが半分です。スマートスピーカー、音声認識の技術を勃興させたいという思いがありました。大規模なコールセンターはSIerと組んでいたので、われわれがライトにサービス化することで、スモールビジネスやもっと現場に近いところで電話対応に困っているお客さまにリーチできないかと思いました。
猪口 実際に導入するにあたってご苦労はありましたか。
藤川 これはプロダクトの問題でもあるのですが、音声ナビゲーションの問題として、何かを選んでいただくことが非常に難しいですね。ウェブだと一覧を目で見て探せます。例えば47都道府県あっても探してクリックできますが、それを音声認識でやろうとすると、リストを47個分聞くのは時間がかかりますし、既知のリストでないかぎり非常に難しい。それを避けるためには階層構造にして、カテゴリーを設けて絞っていく過程が必要です。
また、お客様から土日や時間外に電話したいという声があって、検討していただくのですが、DECIBELで受け付けた後に誰が2次対応をするかという課題があります。受けた後のオペレーションが構築できないわけです。体制を含めて全体を考え直さなければいけないですね。
猪口 オペレーションシステムを含めたトータルプランが必須ですね。
金森 そうですね。「トータルプラン」というのをマーケティング的に考えてみましょう。例えば、電話がかかってきて困る、電話をどう処理するかという「課題」に対して、自動化することで「解決方法」を見つけ出すところまではいいのです。あと1個抜けているとするなら、「既存の自社のバリューチェーンのどこを変えてどこに組み込むのか?」という設計です。そこを変革することによって業務全体がトータルに変わっていくような設計をして全社合意を取る。この段階が抜けていると「残念な形」になってしまうのではないでしょうか。
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残念なDX
2024.01.31
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