スポーツへの参加障壁をなくし、誰でも「勝つ」可能性を秘めたスポーツが「ゆるスポーツ」 今では、企業でのイベントや企業研修にも取り入れられています。世界ゆるスポーツ協会の萩原拓也様に、ゆるスポーツの魅力とこれからの可能性についてお話をうかがいました。(聞き手:猪口真)
猪口 ゆるスポーツとお聞きして、うまい人や強い人が負けてしまう、初心者でも優勝してしまうようなイメージを持ったのですが、ゆるスポーツの定義はありますか。
萩原 世界ゆるスポーツ協会では「ゆるスポーツの5LINES」という基準を設けています。
1. 老若男女健障、だれでも楽しめる。 2. 勝ったら嬉しい。負けても楽しい。 3. プレイヤーも観客も笑える。 4. ビジュアルと名前が面白い。 5. 社会課題からスタートしている。 |
一つ目が、年齢、性別、運動神経、運動経験にかかわらず、誰もが楽しめるものです。
二つ目が、勝ったら嬉しい、負けても楽しい。勝ち負けはきちんとつけます。ゆるスポーツというと全員が一等賞のようなゆとり教育時の運動会を想像される方もいると思いますが、そういうものとは違い、きちんと勝ち負けをつけます。スポーツは勝ち負けがあるから楽しいし、頑張れる。勝ち負けなしにしてみんな勝つというのは、スポーツのもつ楽しさの一面を損なっていると感じます。それで、猪口さんがおっしゃったように運動が苦手な人、嫌いな人が、ハンデがなくても勝てる可能性があるようなルール設計をしています。ハンデは与えませんが、サッカーでもバスケでもラグビーでも、経験者と未経験者の差が縮まるような設計をして、未経験者でも勝ってしまう可能性がある。これを「楽しい下剋上」と言っているのですが、こういった可能性が出るように意識しています。
猪口 なるほど。勝つ可能性があるということですね。
萩原 三つ目は、プレイヤーも観客も笑えること。われわれはsmileとlaughを明確に分けて考えています。ゆるスポーツのイベントでは「笑顔でスポーツしましょう」というポスターがよく見られますが、僕は「笑顔はやめよう」と言っています。笑顔ではなく「笑い」がいい。声を出して笑ってほしい。チンパンジーでもsmileとlaughを区別しているそうです。laughは感情の爆発で、すごく面白いとか自分が気持ちいい時にするもの。Smileは他者との間に緊張状態があるときにそれを緩和するためにおこなわれるもの。われわれはどちらかというとsmileよりもlaughで終わって欲しいので、笑顔ではなく「笑い」という意思表示をしています。
四つ目は、シェアしたくなる名前とルール、ビジュアル。昨今、情報の拡散ではマスメディアよりSNSが強くなってきて、一般の人の発信力がより強まっています。そのスポーツを見たり、やったりした人たちが発信したくなるようなものでないと継続性がなく、広がっていきません。見た目、名前が面白いもの、人に共有したくなるようなものを意識しています。
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