前回の「残念なDXからいかに抜け出すか DXにはマーケティングが欠落している?」(https://www.insightnow.jp/article/11890) 第1回は、日本企業のDXに存在する「残念なDX」現象をテーマに、顧客志向が弱いこと、そもそも成功なのか失敗なのか明確でないという話をしました。今回はDXの誤解と失敗の原因について、さらに一歩進んだ話をしたいと思います。
金森 前回ご紹介した、『DX白書2023』の「DXの取組領域ごとの成果状況」で、日本は20%台で、米国の約70%と大きな差を付けられている、本来のDXに相当する「新規製品・サービスの創出」「顧客起点の価値創出によるビジネスモデルの根本的な変革」の部分が実現されているわけですね。
猪口 僕が個人的に好きだったのは、少し古いのですが、駐車場のタイムズさんです。西川社長がITに大きな投資をしました。当時は、従業員からもなぜITなのかと言われていたそうですが、駐車場の稼働率の計算による収益の確保から空き駐車場の検索サービス、さらに、カーシェアのビジネスにもつながっていきました。ビジネスモデルとして本当に秀逸です。
金森 業務改善型のDXを否定するわけではありませんが、やはりこういうところに目を向けてほしいですね。
富士 今までの失われた30年のような日本の遅れを取り戻そうと思ったら、業務改善レベルでグローバルに持っていくのは難しいですね。一方でコロナがあけて、今はインバウンドが多いので、国内ではまさに力の出しどころでありチャンスです。
先日テレビで、「うまい棒保管ケース」というものが紹介されていました。ケースにうまい棒を入れておくと、象が踏んでも潰れません。開発のきっかけは、幼稚園の女の子がうまい棒を家に持って帰ろうと、大切に持って帰ったのですがポケットの中で潰れてしまいボロボロで悲しんでいる姿を見てつくったそうです。枚方市の中小企業の技術を使ってうまい棒ケースをつくったらばかうけで、そのままふるさと納税の返礼品になったり、クラウドファンディング活用にもなったりしたそうです。それを見て、まだまだお客様のニーズに応えていくということは、いろいろなことができるような気がしました。このイノベーティブな商品作りが企業文化として花開き定着するには時間がかかるかもしれません、われわれがD Xについてこうしてあれこれ言うのも、やはりお客さまの期待以上に応えるためにデジタルの技術を活用する、そしてやり方や考え方を刷新してより付加価値の高い社会に役立つものにする、そこへつなげたいというのが一番の思いです。
次回は「組織文化とリーダーシップの役割」についてです。これも結局人の問題です。アーリーアダプターがいなければできないのか。技術的にその人がいなければいけないのか。そもそも今は人材不足の問題と重なっています。それから、ベテラン層の活躍も大事です。その辺をうまく組み合わせたいですね。多様性を発揮すればするほど、DX、イノベーションは近くなっていきます。今までの日本のスタイルだった、同一のおじさんたちの集まりだけではできないことを、グローバルに向けてはもっとやらなければいけません。
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残念なDX
2024.01.31
2024.01.31
2024.05.20