前回の「残念なDXからいかに抜け出すか DXにはマーケティングが欠落している?」(https://www.insightnow.jp/article/11890) 第1回は、日本企業のDXに存在する「残念なDX」現象をテーマに、顧客志向が弱いこと、そもそも成功なのか失敗なのか明確でないという話をしました。今回はDXの誤解と失敗の原因について、さらに一歩進んだ話をしたいと思います。
富士 そうですね。1回聞いて対応するととイレギュラーありきになってしまいます。問題のあるシステムの多くはイレギュラー対応が原因です。私がエンジニアだった頃、稼働の9割がイレギュラー対応でした。システム導入時に業務を見直したのにイレギュラー対応はなかなか減らなかったりします。システム要員はその対応に追われています。本来は割り切ってやらなくていいことも、エンジニアの親切心やクラフトマンシップから対応してしまうのです。
実は、エンジニアの仕事はものづくりと考える人が少なくないです。私はずっと、サービス業だと思っていて、儲からないことはやらなければいいと思っていました。ものづくりの人は技術者魂みたいなプライドが高くて、「できないことはない」と言い出したりします(笑)
金森 そこは前回お話しした「目的と成果をきちんと決めているか?」が関係しています。イレギュラーまで全部対応しようとしたら「1to1」でやらなければなりません。そこまでやらなくていいのであれば「マスカスタマイゼーション」でいいわけです。そこを決めないで始めてしまうから、結局全体として顧客体験の向上も見られずにどっちつかずになってしまうのです。
富士 そこが難しいですね。決めなければいけないものをどこまで決めるか、どのようなレベルで決めるか。この2点が決められないのは日本人がノーと言えないからで、ノーと言わないで戦略をつくろうとすると、すべてが戦略でなくなってしまいます。
猪口 客の一声でなびいていては何が戦略なのか分かりませんよね。
富士 そういうことです。それなのに、クレームがたくさんきても、ほとんどの会社はそこにメスを入れていないですよね。クレームまでひっくるめてニーズとして捉えなければいけません。単にニーズのことしか考えない、それに外れた場合にはどうするかというイレギュラー対処がないと、結局そこにかかりきりになってしまいます。
続き⇒ 【インサイトナウ編集長鼎談】「残念なDX」第2回:DXの誤解と失敗の原因(2)
金森 努氏プロフィールページ:https://www.insightnow.jp/profile/kanamori_tsutomu
富士翔大郎氏 プロフィールページ:https://www.insightnow.jp/profile/jzpdbtta
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残念なDX
2024.01.31
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