前回の「残念なDXからいかに抜け出すか DXにはマーケティングが欠落している?」(https://www.insightnow.jp/article/11890) 第1回は、日本企業のDXに存在する「残念なDX」現象をテーマに、顧客志向が弱いこと、そもそも成功なのか失敗なのか明確でないという話をしました。今回はDXの誤解と失敗の原因について、さらに一歩進んだ話をしたいと思います。
猪口 業種でも違うし、組織でも違う。一個の企業の中でも違うということですね。
富士 確かにその通りです、もっと言うと個人個人の意識も違います。
金森 つまりは、「共通認識の不足」ということですね。
富士 前置きが長くなりましたが、「共通認識の欠如」が今回のテーマです。
猪口 それでもそれぞれの企業に適したことをやらなければいけない。個々で違っている必要があるのに共通の認識も必要というのは、なかなか難しいですね。
富士 「共通認識を持たなければいけない」という大前提がまず共通認識されていないわけです。今は共通認識が合わないまま、危機感だけでなく国や経済団体等からDXをやらなければと圧があります。社員は社員でとにかくやらないと目先の評価をもらえないので、共通認識があろうがなかろうが関係なく進めなければならない、共通認識すべき中身も正確に捉えられていない状態です。
まずD Xの段階について考えてみます、いろんな整理の仕方がありますが1つの例を示します。
1.デジタル化の初期段階(Digitalization Initiation):
○概要: この段階では、基本的なデジタルツールやテクノロジーを導入し、従来のアナログプロセスをデジタル形式に変換します。
○事例: 地方の図書館が紙の図書カードをデジタル化するプロジェクトを実施。利用者がオンラインで書籍の有無を確認できるようになり、図書館の業務効率が大幅に向上。
2.オペレーショナル効率の向上(Operational Efficiency):
○概要: デジタルツールを活用して業務プロセスを効率化し、生産性を向上させます。
○事例: 中小規模の製造会社が生産ラインに自動化装置を導入し、作業員の手作業を減らす。結果、生産効率の向上とエラー率の低下を実現。
3.部門間連携の強化(Interdepartmental Integration):
○概要: 異なる部門やチーム間でのデジタルツールとデータの統合を進め、組織全体の協働とシナジーを生み出します。
○事例: ITサービス会社が営業、マーケティング、カスタマーサービス部門のデータを統合するCRMシステムを導入。情報共有の改善により、顧客対応の質が向上。
4.データ駆動型意思決定(Data-Driven Decision Making):
○概要: データ分析とビッグデータを活用して、戦略的な意思決定を支援します。
○事例: 小売業者が顧客の購買データを分析し、需要予測モデルを構築。在庫管理の改善と効率的な商品補充を実現。
5.ビジネスモデルの変革(Business Model Transformation):
○概要: デジタル技術を活用して、ビジネスモデルそのものを革新します。
○事例: 伝統的なタクシー会社がデジタルプラットフォームを導入し、モバイルアプリによる予約システムを開始。顧客の利便性向上と新しい顧客層の獲得を実現。
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残念なDX
2024.01.31
2024.01.31
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