日本はもはや先進国ではない:似非株式会社のツケと信用収縮

2023.10.22

経営・マネジメント

日本はもはや先進国ではない:似非株式会社のツケと信用収縮

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/戦後の日本は、サラリーマンの小口預金を集めて銀行が大口貸出をするだけでなく、株式の持ち合い、口約束の売り掛けなどによって、法外なレバレッジで信用を膨らましてきた。しかし、コロナに少子化、DXに耐えきれず、家族経営の似非株式会社が商売を畳むとなると、すべてが逆回転し始める。/

信用創造というと、教科書的には、銀行の小口預金の平準化によって大口融資を可能にし、実質的な通貨量、経済規模を捻出するマジックだ。しかし、戦後の高度経済成長において、日本はもっと風変わりな方法でインフレを賄ってきた。

それは、第一に中小企業の会社成り。実態は家族経営の工場や商店にすぎないにもかかわらず、株式会社の体裁を採ることで、オーナー一族の所得税と相続税を節税(脱税)する方法。中小企業の比率そのものは、さほど他国と変わるところはないが、その資本関係は、ワンオーナーだったり、持ち合いだったり、地方の主軸企業を中心とする自覚無き迂回出資だったり。ようするに、実際の資本無しに、多くの中小企業が、資本金があるかのような数字だけのバランスシートを捏造して、経営の基盤にしてきた。これもまた「信用創造」。

第二に、そのうえ、よく言われるように、日本の中小企業は、そんなインチキのせいで自己資本比率が低く、したがってROI(投資利益率)が低い。運転資金の大半を、あちこち複数の金融機関からの借入金で賄って、企業としての総資本を何倍にも膨らませて、手に余る規模の経営を行っている。くわえて、法人税圧縮、と称して、ムダに経費を掛け、あえての赤字経営でも、もとより株主は持ち合いだから、配当無しでもおたがいさま。一方、金融機関は固定で金利が入るから、文句を言わない。

そして、第三に、いいかげんな売り掛け商売。まともに手形さえも切らず、半年後の決算払いのような口約束が横行。仕事はグルグル回っていて、帳簿上の数字は膨らんでいるのに、手元の現金はギリギリのカツカツ。いわゆる自転車操業だ。それでも、入る当て、払える当てはある、ということで、なんの問題も無く、どんどん仕入れして、どんどん仕事。これもまた、「信用創造」。

ようするに、戦後の日本経済は、砂上の楼閣、どころか、幻影の城だった。経費も、人事も、実態はオーナー一族の私的商売を拡大しただけなのだから、金融機関も「社長」や家族に個人の連帯保証を打たせ、それを承知で、法外な役員報酬で豪邸その他の個人資産を蓄財しまくり、それもまた会社成りさせて、資産課税逃れ。

これが永続できればいいが、こんな戦後型中小企業の似非株式会社も、さすがにそろそろ代替わり。息子や娘が継ぐならまだしも、それがいないとなると、社長(執行役)だけでも、だれか代わりを探さないといけない。しかし、こんな実態も利益も無い「会社」の雇われ社長なんかになるバカはいない。なんで自分が身を粉にして働いて、役立たずのくせにいつまでも会社にへばりついているオーナー一族の贅沢三昧、資産形成をやってやらんとならんといかんの? というわけ。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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