/団結だ、なんて、古くさい頭で、来るべき時代に対応できるわけがあるまい。しかし、それは資本側も同じで、工場や機械、ビルや店舗さえ握れば、労働者たちが集まってきて、どうかあなたの下で働かせてください、と泣いて頼んで来るだろう、などと思っていたら、大間違い。/
そもそも、労働者だ、団結だ、なんて、前々世紀のマルクスのままの古くさい頭で、来るべき時代に対応できるわけがあるまい。しかし、それは資本側も同じで、昔のようにカネをかけて、工場や機械、ビルや店舗さえ握れば、地方から喰い詰めた労働者たちがわんさか集まってきて、どうかあなたの下で働かせてください、と泣いて頼んで来るだろう、などと思っていたら、大間違い。いくらカネを積み上げて見せても、あんたのところには、もう誰も行かないよ。
カネは、一種の物的言語だ。だから、カネは、人にしか通用しない。人が減る、ということは、カネの威力が低下する、ということ。働く方だって、目先のカネを少々はずんでもらったところで、そんな可能性のない産業に埋もれて、自分の人生の後半を捨てるほどバカではない。多少、賃金が安くても、自分も会社といっしょにのし上がれると思えばこそ、ともに仕事に努力する。
だから、重要なのは、カネではない。まして、労働力でもない。そこに明日の夢があるかどうかだ。人に頼らず、自分たちで実現可能な現実的なビジョン。かつてのヘンリー・フォードのように、歴史文明論的展望を持った社会と産業の「指導者」こそが、いま期待されている。
解説
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2024.01.11
大阪芸術大学 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。