/日本列島はユーラシア大陸の東のヘリ、プレート上に浮いている花崗岩と変成岩、そのすきまに積もった砂や泥できている、見せかけだけの「大地」。おまけに、周囲であちこちのプレートがぶつかって、その影響で、島の中も、地形を変えるほどの大量の火山岩や火山灰を噴き出す火山だらけ。こんなもん、いつなにがあってもふしぎではない。/
フォッサマグナ、とか、中央構造線、とか、なにか聞いたことはあるだろう。しかし、それが何かとなると、心許ない。そのうえ、近年は、先の東北大震災に加えて、迫り来る広範な東南海地震や首都圏直下型地震、さらには富士山大噴火の話もしばしば。空気と同じくらい、あってあたりまえ、不変不動のものとして気にもしていなかった大地が心配になる今日このごろ。日本列島は、ユーラシア大陸から切り離されてできた、と、昔、どこかで習ったかもしれないが、その成立経緯は、単純に図式化しても、こんなにややこしい。
はるか昔、太平洋のまん中、プレートに亀裂がある中央海嶺では、プレートの下の深いマントルからマグマが次々と吹き上がり、すでに冷えてかたまったマグマ=黒っぽい玄武岩の太平洋プレートを外側へ押し出していた。このため、この太平洋プレートは、ユーラシア大陸の東のヘリでとぶつかり、日本海溝で、その下へ沈み込みつつあり、この際に上に乗った海底堆積物が剥ぎ取られ、その西側、ユーラシア大陸のヘリに押し上げられて海岸海面下の「付加体」となった。(付加体では、新しいものが古いものを押し上げるので、地層が上下逆転する。)
このユーラシア大陸プレートに沈み込む際の超高温超高圧の摩擦熱で、およそ1億8000万年前から100万年前にかけて、太平洋プレートの黒い玄武岩が再び融け、成分ごとにゆっくりと結晶し直し、黒い粒々を含む、白っぽく、より硬い花崗岩ができる。また、その周辺の海底堆積物由来の付加体も、その熱と高圧で、さまざまな変成岩になった。これらが日本列島の大元。つまり、日本列島は、大陸側にくっついていたとはいえ、大陸側のプレートが割れて分かれてできたのではなく、むしろ押し寄せてきた太平洋由来ものからできた花崗岩と変成岩でできている。
さて、こうしてユーラシア大陸プレートのヘリのあたりのあちこちの海岸海面下で花崗岩や変成岩が硬く固まっていくにもかかわらず、さらに太平洋プレートは押し寄せ、海底堆積物を押し付けてくる。このため、その花崗岩と変成岩は、たがいに押し固められ、やがて大きくシワが寄り、隆起と沈降が生じた。この際、マグマ由来の硬い花崗岩ほど、そこまで硬くない海底堆積物由来の変成岩に押し上げられ、地上に弾き出されて、列島の背骨となる大山脈を形成する一方、ユーラシア大陸との間に、後に日本海となる巨大なヘコミを作った。
ところが、太平洋プレートは、その南の西端、中国華南で完全にユーラシア大陸プレートに堰き止められ、ちょうど原日本列島の関東の東あたりでフィリピン海プレートとして割れてしまっていた。それは太平洋プレートとともに原日本列島の下へ西へ潜り込むとはいえ、太平洋プレートより遅くしか動けない。このため、硬い花崗岩を背骨として太平洋プレートともに西進する原日本列島に比して、フィリピン海プレートが沈み込む南海トラフ(海底帯盆地)に直結している西日本南側の変成岩の部分のみが進み遅れ、関東から紀伊半島、四国、九州まで、その南側が裂けて東に大きくズレた「中央構造線」となった。
解説
2023.03.31
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2023.12.01
大阪芸術大学 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。