/日本列島はユーラシア大陸の東のヘリ、プレート上に浮いている花崗岩と変成岩、そのすきまに積もった砂や泥できている、見せかけだけの「大地」。おまけに、周囲であちこちのプレートがぶつかって、その影響で、島の中も、地形を変えるほどの大量の火山岩や火山灰を噴き出す火山だらけ。こんなもん、いつなにがあってもふしぎではない。/
東日本は、厳密にはユーラシア大陸プレートというより、アラスカからカムチャッカ半島まで延びる北米大陸プレートないし独立のオホーツク海プレートの上に漂っており、日本海溝へ押し寄せる太平洋プレートとともに、さらに西進を続ける。しかし、西にいけないフィリピン海プレートに直結している西日本との差にやがて耐えられなくなり、2500万年前ころ、原日本列島はその中央部で硬い花崗岩大山脈がポッキリと折れて切り離され、「フォッサマグナ(大地溝)」ができてしまった。こうして、原日本列島の上下がそれぞれ大陸と陸続きのまま、このフォッサマグナから、内陸だった原日本海のヘコミに海水が流れ込み、その間に変成岩の関東山地が大きな島として残った。
この大断裂によって、西日本ではフィリピン海プレートが以前よりも北上しやすくなり、2200万年前ころ、中央構造線北側の花崗岩山脈を北に押しやって、その向こうに新たに北九州から現瀬戸内海、伊賀盆地、現伊勢湾を経て長野西半まで続く長大瀬戸内湖帯のシワを作った。一方、東南の海でも、動きの遅いフィリピン海プレートに太平洋プレートが潜り込み、2000万年前ころ、その沈降線の上、現在の伊豆諸島で海底火山が活発化。吹き上げて玄武岩として固まり、プレートに浮いた大小の火山島は、さらなる火山活動に押しやられ、かといって、北の太平洋プレート方向に行くこともできず、フィリピン海プレートとともに、火山活動をも引き連れて、この線上を西北へ進み、伊豆半島として日本列島にくっつく。それどころか、押し寄せ続ける火山島群は、さらにフォッサマグナのスキマにも入り込んで、先の中央構造線のズレも、その北の長大瀬戸内湖帯も、ぐいぐいと現塩尻まで押し曲げ、かつての列島の背骨、西日本東端の花崗岩大山脈を隆起させて南アルプスを形成。
この強引な湾曲で、西日本が乗っている下のユーラシア大陸プレートにも亀裂が生じ、その下のマントルからマグマがせり上がって、約1500万年前、火砕流堆積物(溶結凝灰岩)でできた北アルプスとして、南北に連なる、いくつもの火山ができ、これらが長年に渡ってとてつもない量の火山灰を噴き出し続けた。そして、これによって、フォッサマグナ(関東平野)の海はもちろん、西日本の長大瀬戸内湖帯のヘコミも埋まり、大阪や奈良、尾張(濃尾平野東部)、房総島ができた。いま「○○丘陵」と呼ばれる、やたらでこぼこした地形は、たいていこの時代のムラのある火山灰堆積のなごり。
解説
2023.03.31
2023.04.12
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2023.06.22
2023.09.01
2023.09.20
2023.09.23
2023.10.28
2023.12.01
大阪芸術大学 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。