数々の違法が疑われ、その企業体質に厳しい目が向けられているビッグモーター。中古車販売のトップ企業に急成長した過程に、創業者社長の力は良くも悪くも大きかったといえます。今、世間ではその違法行為、異常な企業体質あぶりばかり注目されていますが、ビジネス視点から見れば、そのようなワイドショー的恐いもの見たさより、経営的人事的な検証すべきではないかと思い、書いてみます。
実は日本における労働者は労働基準法などの法律で強く保護されており、コンプライアンスに厳しい昨今、簡単に副社長の一存で解雇も降格もできるものではないのです。懲戒処分などの処罰には高いハードルがあり、一般的な業績不振や幹部臨検での低評価一発での降格は限りなく無理といえます。
さらに解雇となれば、そのハードルはさらに上がります。それは「合理性」の存在です。
「副社長の意にそぐわない」「役員が決めた」では何ら合理性の証明にはなりません。それゆえ解雇はもちろん、社員の降格などの人事評価には評価委員会など組織として合理性を持って判断した証拠が必要です。不始末を起こしたことで評価を下げること自体は可能ですが、その不始末のもたらした損害額を合理的に説明する責任が会社にはあります。
今回指摘される幹部による不適切行為が「パワハラ」かどうかも、単に暴言かどうかだけでの判断はできません。パワハラ判定は「パワハラ3要件」や「パワハラ6類型」に該当することで認定されます。個人の印象ではなく、法人組織の経営責任となるため、パワハラ委員会など組織としての検証と意思決定が必要です。
・「管理職なので残業代はつかない」?
よく「自分は管理職なので残業代もつかず、部下社員の分まで作業をしている」という話を聞きます。一見正しいようですが、正確には違います。真の管理職であれば、その通り、残業手当などの対象外ですが、これは経営管理者としての「真の管理職である」ことが必須要件です。単に呼称が課長だの部長だの工場長だから管理職ではありません。
労働基準法の「管理監督者」こそが真の管理職です。それを満たすには「企業全体の経営への高い関与」「出退勤時間拘束からの除外」「管理監督者にふさわしい処遇(給与条件等)」などが必要です。イメージとしては取締役などきわめて高位の役職者であって、規模にもよりますが店長クラスでそこまでの経営関与がある例は少ないように思います。
また暴力は論外で直ちに警察案件。暴言も内容によっては傷害や名誉毀損など刑法犯の可能性があります。
仮に就業規則で上司のさじ加減で人事評価が決まることが明文化されていたとしても、その就業規則が法律に反するものであれば無効。まして就業規則にもない、単なる経営者への忖度などであれば、合理性証明はまず無理です。
・自らを守るために
ウチの会社は有給理由が認められないと取得できない。退職するには上司許可が必要。退勤後でも携帯の連絡に出なければ懲罰・・・・
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2009.02.10
2015.01.26
株式会社RMロンドンパートナーズ 東北大学特任教授/人事コンサルタント
芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。