現在、コンサルタントとしてのキャリアを選択する人が増えており、しかも優秀な人ほどその傾向は強いようです。長年、コンサルタントとして様々なプロジェクトを指揮し、現在も第一線で活躍される、パスファインダーズの日沖博道さんに、コンサルタントとしてキャリアを積むためにはどのような能力が必要なのか、またコンサルタントとしての仕事の楽しさや厳しさについて、お話を伺いました。
猪口 コンサルティング会社と事業会社の間を行ったり来たりしながら、それぞれでの学びを活かして、両方の能力を見つけながら、最後はやっぱり自分でコンサルティング会社をやりたい、というところでしょうか。
日沖 一つは、自分が得意なこと。もう一つは、自分がやったことが世の中的に受け入れられて、ありがとうと言ってくれること。この二つがマッチするところに落ち着いたのだと思います。何十年も言われるがままに、もしくはたまたま直面したことに手を出してきましたが、ぐるっと回って「けっきょくここだね」という感じです。1年目は大変でしたが、ありがたいことに、2年目以降は大手企業でリピートしていただいたり、他にも紹介が続いたりしてきました。
猪口 コンサルティング会社を経営していくときの戦略はどのように決めたのですか。
日沖 今のメインは、新規事業開発のお手伝いと新規事業の建て直しです。実は会社を立ち上げたときは、3本柱を考えていました。1本目の柱は「新規事業」です。私はBPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)とBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)でそれなりに仕事をしてきたので、「業務改革」が2本目の柱です。3本目の柱が「アジア進出」です。
2本目の柱の業務改革は、大手のコンサルティング会社にいたときに結構やっていましたし、本も出して読んでいただいていたので、そこそこ需要があるだろうと思いました。実際に引き合いもあったのですが、小さな会社でできることは限られていました。今も継続していますが、それほど本数が稼げないし、人手が必要です。うちのような小さな会社ができるのは司令塔の役だけで、手足になって動いてくれるのは他の会社です。3本目の「アジア進出」は私のアジア人脈を活用できたのですが、物理的な移動が大きな制約ですし、大した本数は出ませんでした。そういった訳で最初の数年間は、新規事業のコンサルティングをごく短期間で回す、ということを繰り返していました。結局、最初の戦略とだいぶ違ってきました。
猪口 新規事業の立ち上げは皆がやりたいことですが、簡単ではありません。しかもだいたいが失敗に終わると思うのですが、そこを柱にされているということは、相当のノウハウをお持ちなんですね。
日沖 失敗するパターンはよく私も見ているし、経験もしています。そのため、やってはいけないことがすぐに分かるのです。まさにそれをやっているケースが多いので、これはダメ、これもダメとすぐに分かりますが、問題は「これをやればいい」という大正解が分からないことです。何にでも当てはまる普遍的な正解なんてありません。個別に市場の状況を見きわめて、打ち手(仮説)を考え、その仮説検証をやってみる。仮説と検証の繰り返しです。それが正解かどうかはしばらくやってみないと分かりません。
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インサイトナウ編集長対談
2022.08.12