誰もがミスを起こそうとしてミスするのではありません。ついうっかり、こんなはずじゃ、という思い違いなど、予想しない中でミスは起こります。頻発する大企業大組織のミス。危機管理の視点でミス対策を語ります。
・タライ回しの稟議という武器
お役所仕事の典型ともいえる、稟議書にズラリとならんだハンコ。平時においては何の問題もなくまわる単なる儀式ですが、一度こうした事件が起これば、稟議への押印は明確な責任のリストとなります。
山口誤振込事件も、あの巨大な金額から推定して、最後は町長自ら承認したはずです。ビプロジー社が尼崎市から案件受注した際、社内でGoを出すには最低でも記者会見した関西支社長レベルの承認が要るはずです。そこにハンコを着いた人が責任者なのです。
「ハンコついといて知らんとは言えん」とナニワ金融道のセリフのようですが、真理だと思います。
責任追及で痛い目をしてこそ、初めて危機を我がこととして実感できます。
尚、どちらの事件も実際にやらかした当人の責任ですが、これはどこまでその責務を認識していたかによって区別されなければなりません。
単にフロッピーを銀行まで運んだだけの担当者には、基本的に責任はないでしょう。単にデータ打ち込み作業だけを指示されただけの担当者にも、情報管理義務が説明されていなかったなら(これはやや考えにくいですが)責任はありません。
そうではなく、両事件ともにその業務において、自らの意思を持って明確に振込指示までしたのであれば、個人情報取扱いについて指示指導を受けていたのであれば、担当者の重大な責任となります。それであっても管理者は、さらにその上を行く責任があり、そうした暴走を防ぐ措置を取らなかった責任があるのです。
指示した人物は、「常識でわかれ」ではなく、こうした巨大なリスクを含んだ作業を指示する際、自己保身含め明確な指示とリスク対応をしなければなりません。
お役所仕事だった稟議のハンコ。この動かぬ証拠をタテに、ぜひ徹底的に責任を追及し、究極の責任者であるトップ、社長、市長・町長まで、重大な責任を負うことで、組織の危機管理意識が醸成されると思います。
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2009.02.10
2015.01.26
株式会社RMロンドンパートナーズ 東北大学特任教授/人事コンサルタント
芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。