2022.06.03
【インサイトナウ編集長対談】「サービスとはどのような定義で、本質は何なのか」を追求し、サービスを通じて組織的に価値を高めて、成長力を加速する
INSIGHT NOW! 編集部
インサイトナウ株式会社
これまでは、とかく自己犠牲と捉えられがちだったサービスを事業の一環として定義しなおし、「サービス」をサイエンスと捉え、事業を推進していくエンジンにしようと取り組まれる松井さん。 『価値共創のサービスイノベーション実践論―「サービスモデル」で考える7つの経営革新』を上梓され、サービスの本質を企業に伝え続ける松井さんにお話しを伺いました。(聞き手:猪口真)
猪口 自分たちのサービスとは何か、従業員のかた自ら本質的なことを探ることができるようにファシリテートされるのですね。
松井 「価値ある事前期待」が出てくるようになると、どれを選んでも正解なので、的の候補が増えていきます。ここで、事前期待の的を何にするのかとことん議論しなければなりません。われわれがその期待に応えることで他社との差別化になるのか。事業として向かいたい方向性を実現するために、この期待でないとできないのか。また、この期待に応えることで、価値共創の当事者である現場のメンバーはいきいきするのか。
そういったことをとことん議論していくと、この事前期待の議論の中に、事業シナリオが副産物として生まれてきます。事業にはこのような問題意識があって、だから、この期待に応えることでこうなっていく、というストーリーです。ですから、僕から問いかけはしますが、アウトプットは議論メンバーが自分の手で白紙から書いていきます。
サービスの本質がより明確に
猪口 今、松井さんが注視していらっしゃる業界はありますか。
松井 コロナ禍において影響の大きかった、旅行、観光、飲食、スポーツクラブなどの業界では、ただ耐え凌ぐだけのスタンスをとる企業と、コロナを超えてもっと進化しようとチャレンジする企業の差が開きつつあります。痛みを伴った業界こそ、サービスイノベーションにチャレンジするきっかけにしていただけるといいなと思っています。
サービス改革の機運は高まっています。さすがに最初の緊急事態宣言が出たときは取り組みが一回止まりましたが、解除されてからは急激に活動が加速しました。企業の方々とお話をすると、圧倒的に危機感があります。もともと危機感を持っていた会社は、さらに、今こそやらなければいけないという危機感があります。もともと事業が順調だった会社は、事業が順調なときには危機感を持ちにくいので、変化への抵抗感からサービスイノベーションに取り組めずに苦悩しているケースが多くありました。そんな企業では、今はコロナで危機感が高まっていて、このタイミングで事業を進化させないと、元の平穏無事な状態に戻ってしまうと身動きが取れなくなってしまう。自分たちのチャレンジに残された時間は多くはない。そのような想いで取り組み始めた企業もあります。
時代が変化する、新しい時代が来るといったキーワードも出てきていますが、時代が変化すると言われても、サービス事業としてどうしたら良いかよくわかりません。そこで、時代が変化するというのは、顧客や市場の事前期待がどう変化するのかを再定義をすることが大切です。サービス改革をご一緒している企業でこういう議論をしてみると、けっきょく事前期待の的は「変わらない」という結論に達する企業もあります。3か月もかけて本質的な事前期待まで深掘りをして定義をしているので、コロナだからといって、あるいはポストコロナへ向かって、本質的な事前期待は変わらない。むしろ、これまで潜在化していた本質的な事前期待が、ポストコロナに向かって表面化したり、強化されているというのです。だから、本質的なサービス設計の体現に向けて、このまま迷わず進むだけだというように、コロナや時代の変化によってブレることなく改革を進めている企業が多いのが印象的です。
猪口 なるほど。逆に、むしろ本質的な期待値に気づいていなかった可能性もあるわけですね。ますます本質的な「サービス」の重要性が高まりそうです。松井さんの力がさらに発揮されそうですね。本日はありがとうございました。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
インサイトナウ編集長対談
2022.03.16
2022.08.12