/楽して結果を得られることなど無い。たとえ得たとしても、守る力が無ければ、すぐに失われる。むしろ人知れず、小さな実績と自信を積み重ねていっていてこそ、いずれ大事に取り組む覚悟と実力も身につく。それが勉強だ。/
書き取りでも、計算問題でも、クロスワードでもいい。読書だってかまわない。まずは最後までやり遂げろ。そして、少しずつ負荷を上げろ。ぜんぶ覚えるなんてムリ、と思えた九九だって、半年で覚えられたではないか。小学校の漢字、中学生の英単語は、およそ千個。それも、いまになれば、初歩的なものばかり。要は、慣れ、だ。慣れてしまうくらい習っていれば、すぐになんていうことはなくなる。
大事を成し遂げた人に山を好む人は多い。登ったことのあるひとなら、その意味がわかるだろう。走って一気に頂上まで行かれる人など、もとよりだれもいない。ただムリをせず、だがたゆみもせず、一歩一歩、言わば山を削り落として行く。すると、いつか山頂が足下にある。しかし、そのときにはまた向こうに次の山頂を臨み、そこからまた先へと歩み続ける。
勉強は面倒だ。しかし、だから勉強なのだ。楽して結果を得られることなど無い。たとえ幸いになにか得たとしても、それはけして自身の成果とはされず、守る力も無いから、すぐに失われる。また、いきなり大言壮語ばかりしていても、能力も信用もあるまい。人に誇示するためではなく、むしろ人知れず、小さな実績と自信を積み重ねていっていてこそ、いずれ大事に取り組む覚悟と実力も身につく。それが勉強だ。
百日一考
2018.06.30
2021.12.30
2023.01.17
2023.04.29
2024.03.22
2024.04.07
2024.10.16
大阪芸術大学 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。