現22卒就活(2022年4月入社の現・学部4年/修士2年)学生の結果がかなり出そろってきました。既に就活イベントやインターンシップ講座は次の世代23卒学生に移行し始めていますが、ここにきて立て続けに大企業での就活セクハラ事件が続発しています。あり得ないことが続発する背景を、企業は認識しているでしょうか?
・就活セクハラ
就活セクハラは、就活する学生に対し、応募先の企業の社員が働くセクハラ行為です。採用社社員が性的関係を迫ったり、性的いやがらせ・不快言動をする行為です。本来採用企業と学生は対等であるはずですが、現実的には採用される学生は圧倒的に弱い立場です。
コロナで景気先行きが不透明となり、不安な学生心理を突いてセクハラ行為に及ぶという卑劣な事件が、今年6月に近鉄グループホールディングズ、そして日本製鉄という、日本有数の有名大企業において発生したと報道されています。
厚生労働省が2020年10月実施した調査では、就活・インターンシップ経験男女学生1千人が対象となり、セクハラ被害の経験があると答えたのは25.5%。とのこと。本人申告ベースであり、犯罪かどうかまでの精査はないものの、25%という数字は相当に高いという印象です。
・就活セクハラへのホンネ
就活だけでなく会社におけるセクハラ行為ですが、そんなものは昔からあったという発言も聞こえてきます。ハラスメント対応は私の専門領域で、全国の大企業や官公庁、中小サービス飲食企業など、さまざまな職場でハラスメント防止研修を行っています。そんな研修中のディスカッションで、そうした本音がチラホラ聞こえるのです。
研修内のディスカッションで本音で話してもらえるのは、むしろ研修としては大歓迎です。それが本音だから認められるものなのか、そうでないのかを考える重要なきっかけになるからです。
セクハラと一口に言っても、不快言動と性的関係強要ではレベルが違い、後者に至ってはほぼ間違いなく犯罪レベルの悪質な行為です。今年6月に明るみに出たセクハラ事件のように、就活する学生相手に性的関係を強要するのは、きわめて悪質な刑法犯罪です。
ホンネがどうでも、もはや絶対的にセクハラは認められない時代になっています。このことを社員も経営者も、どこまで真剣に理解しているのか、就活と社員ハラスメント対応両方の現場を知る専門家として、非常に疑問を感じています。
・就活セクハラを助長するSNS
かつての就活でOB訪問といえば、就職課窓口でOB名簿を見て、先輩を直接訪ねるものでした。今や母校卒業の事実でさえも完全な個人情報となり、OBかどうかを含め、本人許諾なしにOB名簿などの形で学生に公開はできません。
就職課やキャリアセンターに昔風のOB名簿を見に行く学生は今でも絶えませんが、そこにあるのは大学規模問わず、そうとうあっさりした、卒業生全体の内ごくごくほんの一部の、自ら名簿記載を希望した卒業生情報だけなのです。
ハラスメントの境界線シリーズ
2021.05.26
2021.07.01
株式会社RMロンドンパートナーズ 東北大学特任教授/人事コンサルタント
芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。