もはやニューノーマルの代名詞ともなったリモートワーク。一方で社員と管理職間では新たなハラスメント論争「リモハラ」問題も起こっています。超大手官公庁や企業、中小零細サービス業界まで、危機管理の専門家としてハラスメント防止の伝道をしている筆者が解説します。
1.コロナと企業業績の光と影
もはや会議と言えばオンラインミーティングが前提であり、対面しての会議をやっている企業の方が「例外」となったニューノーマル。センセーショナルなニュースで「コロナで就活氷河期再来!」などと脅すニュースを見て不安になった学生から、日本や世界の経済は破綻するのかと聞かれることがありますが、それはマスコミの煽りに過ぎません。
確かに旅行、飲食、小売サービスなど、コロナの大打撃を受ける産業が厳しい環境にあるのは間違いないでしょう。一方、オンラインミーティングのデファクトスタンダードともなったZOOM社は、対前年比売上300%を超える超絶決算をはじき出しました。
コロナワクチンのキープレイヤー、ファイザー社の決算速報では、2021年の売上が260億ドル、予想を70%以上超える見通しとのこと。コロナの影響下の産業においても、当然光と影の両方があります。
2.リモートワークが新たなハラスメント要因に
そのズーム。オンライン会議が定着し、自宅から会議アクセスする社員で「ハラスメントを受けた」という声が上がるようになりました。こんな例があります。
①一日に何度も進捗報告を求められ、作業監視がきつい
②会議中はもちろん、会議以外の時間も就業中はカメラをオンするよう命令される
③自宅、自室の背景について何か言われる
④会議参加時の私服について何か言われる
⑤リモート飲み会に誘われる
⑥自宅の他の部屋を見せるよう言われる
社員からは、リアル職務では起こらなかった、正にリモートワークが原因で発生した不快な事象をリモハラと訴える声があります。これらはハラスメントなのでしょうか。
3.パワハラ?指導?上司の悩み
結論から言います。ハラスメント防止とその対応をさまざまな職場で訴えてきた立場からすれば、リモートもリアルも「ハラスメント」かどうかで判断されます。パワハラ防止法で厳しい規制ができた一方、セクハラと違ってパワハラは、被害を訴える者が「単に不快に感じた」だけでは成立しません。
パワハラ3要件*を満たすものがパワハラとされます。(*パワハラ3要件:①優越的な関係を背景に行われる②業務の適正な範囲を超えている③身体的/精神的な苦痛を与えたり、就業環境を害すること)
要するに業務上必要な指導や命令はパワハラではないのです。指導先で「何かあればすぐハラスメントと言われるのが恐くて部下指導もできない」という声をよく聞くのですが、私はこうした定義を用いて指導や命令がハラスメントではないことを説明します。業務上の指導や命令はハラスメントではないからです。
ハラスメントの境界線シリーズ
2021.05.26
2021.07.01
株式会社RMロンドンパートナーズ 東北大学特任教授/人事コンサルタント
芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。