ロゼトの奇跡 ~高齢期の健康維持、カギは「どんなコミュニティーで暮らすか」

画像: mstk east

2021.06.09

ライフ・ソーシャル

ロゼトの奇跡 ~高齢期の健康維持、カギは「どんなコミュニティーで暮らすか」

川口 雅裕
NPO法人・老いの工学研究所 理事長

心臓疾患による死亡率が周囲の町と比べて半分以下だったことで、にわかに注目されるようになった町、ロゼト(Roseto)。高齢者が極めて健康だったこの町の秘密は?

もっとも、連帯感や対等・寛容な人間関係、互助や居場所などが心臓疾患のリスクを直接的に減少させているわけではありません。おそらく、これらが食事や運動、交流といった生活習慣をよくする効果を持ち、自分の役割や居場所の存在が精神的な充実をもたらし、周りに人がいる安心感がストレスを緩和することなどによって、健康状態の維持・向上につながっていたのだと考えられます。その結果、心臓疾患による死亡率が周りの町と比べて半分以下になっているというわけです。

ロゼトの奇跡に学べることを2つ、挙げたいと思います。

1つ目は健康を「自分の努力次第」「健康習慣を心掛ける」といった“個人レベル”で考えてはいけないということです。 食事・運動・交流に気を付けて暮らすのは大切ですが、それだけではロゼトの周りにあった町の人々と似たようなものです。ロゼトの奇跡は個人レベルの努力では健康リスクを大きく減らすことはできず、「どのようなコミュニティーで暮らしているか」が健康状態を大きく左右するのだと教えてくれています。

2つ目は古い人間関係の中にいるよりも、新しいコミュニティーで暮らす方が健康維持に効果的であるということです。 「住み慣れた場所で人生を終えたい」という高齢者は少なくありません。しかし、それはやはり、ロゼトの周りの町の人たちと同じです。もちろん、新しければ何でもよいというわけではありませんが、ロゼトのような対等・寛容・互助・居場所といったものが感じられる、極めて「居心地のよい場所」であるなら、古い所に居続けるよりも健康長寿が実現する可能性は大いに高まるはずです。 高齢期の健康維持には健康習慣よりも、「どのようなコミュニティーで暮らすか」が決定的に重要である。ロゼトの奇跡はそんなメッセージを伝えているのです。


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川口 雅裕

NPO法人・老いの工学研究所 理事長

高齢期の心身の健康や幸福感に関する研究者。暮らす環境や生活スタイルに焦点を当て、単なる体の健康だけでなく、暮らし全体、人生全体という広い視野から、ポジティブになれるたくさんのエビデンスとともに、高齢者にエールを送る講演を行っています。

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