トニー・シェイとの出会い:経営戦略の柱は戦略的企業文化の構築

画像: ダイナ・サーチ撮影

2020.12.22

経営・マネジメント

トニー・シェイとの出会い:経営戦略の柱は戦略的企業文化の構築

石塚 しのぶ
ダイナ・サーチ、インク 代表

トニー・シェイとの思い出回顧録の第一回。21年間にわたり、米ネット通販における革命的企業「ザッポス」社の成長を率いたカリスマCEO、トニー・シェイの逝去が11月27日に報じられた。火災による事故死だった。米国内外のビジネス界に多大な影響を与え、46歳の若さで亡くなったトニー・シェイ。12年間におよぶ交流を振り返り、彼の人となりや、心に残るエピソードなど、今までどこにも書いたことのなかった諸々を綴ってみた。今回は2008年5月の出会いについて。

そんな中、トニーのプレゼンは異色だった。ランチを囲みながらの基調講演の題名は『顧客フォーカスなカルチャーをつくる』。ネット通販の会社でありながら、テクノロジーの「テ」の字も含まない話を、ザッポスのロゴ入りTシャツにジーンズとスニーカー、それに坊主頭という少年のようないでたちで、トニー・シェイは飄々と語った。訥々(とつとつ)と話す様子は、お世辞にも「上手い」プレゼンとは言えなかったけれど、決して揺らぐことのない信念と、沸々と湧き出すような情熱は一目瞭然だった。どんなに雄弁なスピーチよりも説得力があった。彼は本物だった。

コア・バリューを基盤に、顧客フォーカスなカルチャーをつくれば、成果(驚嘆(WOW)のサービス)はあとからついてくる!」

この言葉の謎を解き明かすのに12年間を費やすことになるとは、その時は思ってもみなかった。ただ、プレゼンの最後の「ぜひ、ザッポスの本社に来てください!」という招待に誘われて、トニーがステージから下りるなり、自己紹介をし、その数週間後には、当時、ラスベガス郊外のヘンダーソンという町にあったザッポス本社を訪問する約束を取り付けていた。

これが、私とトニー・シェイの出会い、ザッポスと企業文化、そしてコア・バリュー経営をめぐる旅路(ジャーニー)の始まりだった。

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石塚 しのぶ

ダイナ・サーチ、インク 代表

ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。

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