コロナ感染症拡大抑止を目的とする「ロックダウン(外出禁止令)」の影響をもろに受けているのがレストラン業界。米レストラン協会の調べによると、16%が既に廃業。来月にはさらに11%が廃業の見込みといわれている。そんな中、大手クイック・サービス・レストラン・チェーン、サブウェイやパネラ・ブレッドが生き残りを賭けて展開する苦肉の策とは???
コロナ・ウイルス感染拡大防止を目的とし、アメリカの全人口の95%が「ロックダウン」状態にある中、ファストフード・レストランおよびクイック・サービス・レストラン大手数社が、追加売上の獲得を睨み食品およびサプライの販売を始めています。
全米で2,000店舗以上を展開し、年商20億ドルを超える売上をあげるクイック・サービス・レストラン、パネラ・ブレッド(Panera Bread)は、「パネラ・グローサリー(Panera Grocery)」と銘打ち、グローサリーの販売を始めました。
パネラ・ブレッドはサラダやサンドイッチ、スープなどの軽食を主力商品とするお店ですが、「パネラ・グローサリー」のサービスを通して、基本的にこれらの軽食に用いる食材を販売しています。ベーグルやバゲット、食パン、ミルク、ヨーグルト、クリーム・チーズ、リンゴ、アボカド、ブルーベリー、ブドウ、トマトといったようなものです。各都市の外出禁止令に従い、飲食店はイート・インのサービスを全面的に停止し、現在、テイクアウトとデリバリーのみを提供していますが、イート・イン・サービスの停止に伴い売上が激減する中、1)食材の販売により売上を補完する、また、2)店舗での販売量が激減しているため、せっかく仕入れた食材が無駄になるのを防ぐという二つを意図したものと思われます。
また、サブマリン・サンドイッチのファストフード・チェーン、サブウェイ(Subway)は、カリフォルニア州、コネチカット州、オレゴン州、テネシー州、ワシントン州で250店舗以上を展開していますが、同社も「サブウェイ・グローサリー(Subway Grocery)」と銘打ち、主力商品であるサンドイッチやスープの食材であるパン、肉、卵、チーズ、野菜、冷凍スープなどを販売しています。サンドイッチの具ですから、「肉」といっても生肉ではなく、グリルされたチキンやバーベキュー・チキンなど調理済みの肉です。それを、「バルク」で買うことができます。たとえばグリルされたチキンを3ポンド(約1.4キロ)などというようにまとめ買いできるのです。アメリカ人は料理が嫌いな人も多いですから、ロックダウンされている中、こういった食材をまとめ買いしておいて、サンドイッチをつくって食べる、というのはなかなか需要がありそうです。
実は、こういった「工夫」を先んじて始めたのは中小独立系のレストランらしいです。ロックダウンの直後に、店を閉めなければいけないが、すでに仕入れてしまった食材をどうしよう・・・ということで多くのレストランが食材の販売を始めたのだそうです。そうしたスモール・ビジネスの「知恵」を大手が学んで取り入れているわけです。
ビジネス・モデル
2012.02.11
2011.10.07
2011.02.23
2008.05.13
2020.04.08
2020.04.18
2020.05.12
2020.05.19
2020.06.05
ダイナ・サーチ、インク 代表
ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。