ビジネス戦略を語る際によく使われるのが「差別化」という言葉ですが、言葉でいうのは簡単でも、実践して成果を出すのはなかなか難しいものです。「商品」でも、「サービス」でも、「テクノロジー・インフラ」でも差別化が困難な時代に、会社の構成員皆が大切にするコア・パーパス(存在意義)とコア・バリュー(中核となる価値観)を定め、日々の事業活動や社内外の人間関係において実践していくことによって、ずばり「差別化」や「独自性の確立」につなげていくのが、コア・バリュー経営です。
「感動を生むサービス」を顧客に提供できる会社の社内には、上司と部下、同僚同士という関係性に関わらず、「感動を生むサービス」が日常的に溢れているはずです。それが会社の文化になっているからこそ、サービスの精神が根付き、感性が磨かれます。
コア・バリューの共有で人のパワーを解き放つ、人間性重視の職場づくりを
ディズニーのトレーナーの話に戻りますが、講演の中で、もうひとつ、身につまされる言葉がありました。
「従業員ハピネスは、リーダーの責務」というものです。
ハッピーな従業員こそが、ハッピーな顧客をつくることができ、ハッピーな顧客がロイヤルな顧客に転じれば、企業価値の向上につながります。だとすると、顧客の心を動かすサービスが出来ないからといって、フロントラインの従業員を責めるのは間違っている。まず、そういったサービス体験が創造されるような環境(つまり企業文化)をつくることをしていない企業リーダーこそが、自らの怠慢を恥じるべきなのだ、とこの言葉は厳しく指摘します。
アメリカの流通業界では、今、まさに、サービスを軸とした企業文化の育成に焦点を置き、めきめきと頭角を表してきている会社がたくさんあります。90年代中盤から2000年にかけての、「テクノロジー至上主義」の時代を超えて、ウェブ2.0の向こう側にある次世代ビジネスの形は、「ITのパワー×人のパワー」だというのが、私の持論です。
そして、感性、創造性、情熱などといった「人のパワー」を解き放つためには、コア・バリューの共有を軸とした理想の企業文化の醸成と、人間性重視の職場づくりが急務であることは明らかなのです。
サービス経営
2009.07.23
2008.09.13
2008.08.12
2020.03.05
ダイナ・サーチ、インク 代表
ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。