経営戦略の基本的な内容を解説していく内容です。構文という意味はバラバラに読んでもそれなりに意味がわかって読める、定型化されているということですが、読み物としてもそれなりに読めることを目指します。
いちおう、ここで言う戦略について述べておきますが、ポーターのいう戦略はポジショニングです。ポジショニングとは、その業界におけるクリティカルな戦略変数に対する一連の選択の結果を指します。
これだと意味不明なので、具体的に書くと、とある業界では低価格なのか高価格なのか、高品質なのか低品質なのかがクリティカルな競争における選択だったとして、高価格高品質路線なのか、低価格低品質路線なのかという選択がポジショニングであり、それをうまく遂行する能力がケイパビリティです。
結果として企業のこれらの選択がクリティカルだということは、消費者が安かろう悪かろうを買う人たちと、高くてもいいものを買う人たちに二分される業界だ、ということですね。
話をもとに戻しましょう。
戦略とケイパビリティは競合を見ればわかりますが、競合がマーケットに対して抱いている仮説なんてなかなか見えてこないですよね。将来どうなりたいかは耳障りのよいビジョンなどからは垣間見ることはできてもなかなか見えてこない。
しかし、ポーターはこれらの将来の目標と持っている仮説の分析こそが、これから競合がどう動くかを知るときに重要だと考えています。未来の競争の落としどころを考えることがポーターの言う競合との競争ですからね。
ポーターは競合との競争については、ゲーム理論で有名なシェリングの期待均衡の考え方をもってきています。要は、今後、どういう落としどころに競合企業との競争が落ち着くか?を知ることが大事だと言っているわけです。
理由としてはこのシリーズで以前に書いたかもしれませんが、「非合理な潰しあいに陥らずに、合理的に収益を競合と分け合うことがよい」とポーターは考えているからです。
完全競争と違って、収益をしっかり分け合えない状況が発生することを指摘したのが、ゲーム理論の大きな貢献ですよね。囚人のジレンマで有名ですが、お互い得な選択をすると、結局、お互い信頼しあった選択をするよりも、分け合える収益が下がる。有名なケースではガソリンスタンドの値下げ競争があります。
お互いに値下げしないのが一番得なのですが、抜け駆けして値下げすれば一時的に収益が上がるもんですから、みんな値下げ競争になってきて、結局、高い価格付けで得られたはずの収益は消えてしまう。
だったら談合をすればいい、とはなりません。談合は違法ですからね。
でもね、ポーターはちゃんとシグナルを出して競争の落としどころを相手にもわからせて、自分も理解することで、談合をせずに収益をなるべく高い水準で保持することを推奨しています。いわゆるマーケットシグナルというやつですね。
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THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役
THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。