米国・ハーバード大学でロジャー・フィッシャー教授が1970年代後半から展開した「交渉学」。 「交渉術」といえば、「交渉相手をこちらの主張に従うよう説得したり、丸めこんだりするスキル」といった捉え方が日本では広まっていますが、本来の「交渉学」は「交渉スキル」に偏ることなく、対話を通じて本当の意味でのWin-Winな解決策を探り、交渉相手との継続的な信頼関係の構築を目指すものなのです。
米国・ハーバード大学でロジャー・フィッシャー教授が1970年代後半から展開した交渉学。日本でも「ハーバード流交渉術」を冠した書籍が出版されるなど、その考え方は広まっています。ですが、「交渉術」という呼び名が示すように、ともすれば「交渉相手をこちらの主張に従うよう説得したり、丸めこんだりするスキル」といった捉え方が、日本では広まっていました。しかし本来の交渉学は「交渉スキル」に偏ることなく、対話を通じて本当の意味でのWin-Winな解決策を探り、交渉相手との継続的な信頼関係の構築を目指すものだといいます。交渉学の真髄を学び、ビジネスの現場で活用できるようにする「実践交渉学認定プラクティショナー養成コース」(以下、実践交渉学コース)という講座が、2015年9月から開かれました。いったいどんな特徴をもった講座で、ビジネスパーソンが学ぶ意味は、どこにあるのでしょうか。
対話力を鍛える授業に「目からうろこ」
同コースを開発、実施するのは、一般社団法人の交渉学協会。ハーバード大でフィッシャー教授から直接交渉学を学んだ、慶應義塾大学法学部教授の田村次朗氏(写真)が理事長を務めています。「私が交渉学を学んだのは、1984年のこと。知識の多さではなく、いかに知識を問題解決のために使いこなすのか、対話力を鍛える授業に目からうろこが落ちました」と、田村氏は交渉学との出会いを振り返ります。これまでも大学での交渉学講座、企業での研修などを通じて交渉学を広めてきましたが、実践者や指導者の養成コースを設けることで、交渉学を体系的に学び、実践する人をさらに増やしたいと、交渉学協会の設立に踏み切りました。
「双方が満足できる解決策を導くWin-Winな交渉というのは、絵空事だと多くの人が思っているのではないでしょうか」と、田村氏。だが交渉学を学び、相手の言い分をしっかり把握しながら対話を深められるようになれば、「こちらの主張か、あちらの主張か」といった二者択一な解決策ではなく、「賢明な合意」の創造が可能になります。「Win-Winな交渉が実際に可能であることを体感できます」と、田村氏はいいます。
4日間のコースでは、模擬交渉で実践も
実践交渉学コースでは、4日間のトレーニングを受講したうえで、認定試験に臨みます。トレーニングでは、問題解決のための対話の、思想と技術の体系である交渉学の基礎を学びます。講義やワークシートなどを通じて、「それぞれの立場ではなく、複数の利害に焦点を当てる」「互いに満足のいく選択肢を、共に生み出す」などから成る「4つの原則」や、交渉の事前準備「ファイブ・ステップ」などを習得します。
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