「大きくなること」ではなく、「偉大になること」を目指す中堅・小規模企業たち、「スモール・ジャイアンツ」に出会ったのは2012年のことだった。従業員みんなが微笑んで、楽しげに、誇らしげに働いている、そして同業者をはるかにしのぐ成長を遂げている姿を見て驚愕した。その秘密はどこにあるのか。
それまで、「コア・バリュー経営」の研究事例は、ザッポス(ネット通販)やサウスウエスト航空、メソッド(製造メーカー)やコンテナストア(小売)などある程度規模の大きい企業に偏っていたのですが、スモール・ジャイアンツを知ることにより、コア・バリュー経営は1)会社の規模に関わらず適用可能であり、成果を発揮する経営手法だ、2)中堅・小規模企業が頭角を現し、「唯一無二」の存在として顧客の「心のシェア(マインド・シェア)」を獲得していくにあたって欠くことのできない経営戦略・手法だ、と確信するに至ったのです。
以来、アメリカのスモール・ジャイアンツたちと肩を並べて、より世のため、人のためになる企業づくり、を目指して研究・啓蒙・導入支援活動に切磋琢磨してきています。
スモール・ジャイアンツの「シェアリング(共有)」の精神
アメリカのスモール・ジャイアンツのコミュニティは「シェアリング(共有)の精神」に満ちています。
同業者も多いのですが、競争心や秘密主義なところはカケラもなく、皆、オープンに「自分の会社ではこうやっている」ということを交換し合っています。悩みを抱える会社が、公開セッションでその問題を皆に打ち明け、アドバイスやインプットを得る、などというようなことも例外的ではなく普通に行われています。
私は、日本では2013年から「日本流スモール・ジャイアンツの育成」を掲げて活動しているのですが、この「仲間意識」や「共生の精神」を日本にも広めていきたいと思って活動しています。
「コア・バリュー経営」を導入して、「スモール・ジャイアンツ」になることは、もちろん、各々の会社が事業を展開する市場や業界で頭角を現すことにつながり、いわゆる「差別化」につながるのですが、だから、「コア・バリュー経営を秘密にしておこう」ということではないと思うのです。
「だってあの会社もこの会社も『スモール・ジャイアンツ』になってしまったら横並びになってしまって競争にならない、意味がないじゃないか!」という人がいるかもしれません。でも、日本にスモール・ジャイアンツが増えれば日本のビジネスの水準が上がります。ひいては、日本の国力や社会の水準が上がることになります。
だから、「皆で高みを目指そう」というのは、「いいことづくし」でしかないのです。
一市町村にひとつ、スモール・ジャイアンツがあったなら
もし、日本の各市町村に必ずひとつ、「スモール・ジャイアンツ」が存在するようになったら、その市や町や村の元気は倍増し、笑顔が増え、暮らしやすい場所になるでしょう。それは、私自身、アメリカの各地を旅して、実際に肌で経験しています。
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2012.05.30
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ダイナ・サーチ、インク 代表
ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。