/『易経』は、二千五百年来の世界的ベストセラーのビジネス書。物事を6つの点で掴み取り、そのそれぞれの陰陽の関係で読み解く。その陰陽の少老から次の変化を推し測る。さらには、卦の分析から物事の障害を見抜き、その部分を陰陽反転させることで、道を開く。/
さらに、陰が上、陽が下、が、吉。陽が上、陰が下、は、凶、というか、離反停滞。逆のように思えるかもしれないが、陰が上で下降し、陽が下で上昇してこそ、陰陽あい交わり、安定した発展になる。これが逆に、陽が上、陰が下だと、いくら上がやる気になっていても、下がついてこない、それどころか、ますます離反停滞していくことになる。
陰陽に対するこの3つの理解が基本。これらの陰陽という抽象的な概念で物事をシンボリックにとらえ、その関係を理解していこうというのが、易学。
64卦の世界観と倫理観
陰と陽、三本の爻で八卦ができる。これを内と外、2つ重ねて64卦。下が内で、上が外。内外6本の爻も、下から上に数える。そして、陽を「九」、陰を「六」と呼ぶ。
占い師が筮竹でやっているのは、50本の棒から1本を除き、息を止め、残りを適当に半割にして、ごちゃごちゃやって、残りが24本なら老陰、28本なら少陽、32本なら少陰、36本なら老陽。じつは後半は派手なだけの演出で、適当に半割にしたときにすべてが決まっている。
ところが、昔から、よく易を修める者は占わず、なんて言われている。竹の棒なんかの偶然を当てにするまでもなく、状況を見れば、おのずから個々のポジションの陰陽は明らか。その状況を64卦を介して分析考察し、もう一度、現実の具体的な指針として読み当ててやればいい。つまり、状況を6点測光して抽象化し、その単純なイメージで、全体の成り行きを理解する。
たとえば、会社であれば、現場と上層部。ヒラたち、課長、部長、そして、取締役たち、社長、会長ないし親会社。ある案件に関し、この6つのポジションのそれぞれのやる気具合を少陽、老陽、少陰、老陰の4つのいずれかで評価する。これで、占わなくても、6爻の卦ができる。同様に、交渉事であれば、社内、社長、仲介者が内卦、窓口、決定権者、世論が外卦になる。
こうして卦が決まれば、あとは、それぞれの爻の辞(一言コメント)の意味を具体的に考えていけばいい。だが、爻の辞は、咎(とが)なし、とか、悔(くい)あり、とか、ものすごい簡素。これだけでは、なんのことやら。そこで「十翼」の解説を参考にすることになる。
ここにおいて、まず見るべきは、内卦と外卦の関係。このソリが合っていないものは、そもそも大局的に難しい。次に、内卦の中心の第二爻と、外卦の中心の第五爻。第五爻が陰(「六五」)で、第二爻が陽(「九二」)であれば、上が陰、下が陽で、全体としてまとまる方向にある。しかし、この逆、第五爻が陽(「九五」)で、第二爻が陰(「六二」)であれば、上が陽、下が陰で、笛吹けども踊らず、全体として空回りの様相。同様に、第一爻と第四爻、第三爻と第六爻の関係も、陰陽の「応」であることが望ましい。
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2009.10.27
2008.09.26
大阪芸術大学 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。