現代社会のインフラを支えるコンクリートの材料となるセメントは、まさに縁の下の力持ちです。
今日、5月19日は「セメントの日」です。
1875年5月19日、官営深川工場で日本初のポルトランドセメントができた日を記念しています。江戸時代の末期からセメントは輸入されていましたが、非常に高価であったため、国内生産が求められていました。しかし、工業化は思いのほか難しく、深川工場の設備をすべて作り直すなど1年半の試行錯誤の末に少量のセメント製造に成功したそうです。現在、深川工場の跡地には、「本邦セメント工業発祥之地」という碑が建てられています。
インフラに関するたいていの物がそうであるように、普通の人は、セメントの存在をほとんど意識することなく暮らしています。セメントとコンクリートを間違えたり、混同したりしていることも多いようです。セメントは石灰石に粘土や酸化鉄などを高温で熱し粉末にしたものです。セメントと水と砂と砂利を混ぜるとコンクリートになります。コンクリートという「人工の石」を固めるための接着剤の役割をしているのがセメントなのです。
コンクリートはセメントの水和反応で徐々に硬化し、ビルや橋やダムなどになります。新築マンションを購入するときなど「コンクリートが乾くまで入居できない」と説明されたりしますが、実際にはコンクリートは水分が乾いて硬くなるわけではなく、化学反応で硬くなっているのです。この水和反応は何十年も続き、コンクリートは少しずつ強度を増していきます。コンクリートは自由に形が作れ、火や地震に強いため、多くの建造物に使われていますが、最大の強度を得るまでに時間がかかるという“弱点”もあるのです。
「セメントの日」というのは数ある記念日の中でも、あまり知られていません。コンクリート製の建造物が溢れる街に住んでいても、あるのが当たり前の物にはあまり注意を払わないのが人と言うものなのでしょう。先人が苦労して作り上げた技術のうえに、今の生活が成り立っていることを思い出させてくれる「セメントの日」です。
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