現場は「プロセス」で評価すべきでは?

2008.01.28

経営・マネジメント

現場は「プロセス」で評価すべきでは?

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

ある事業(会社)がもうかるかどうかは、 「事業立地の選択」 次第。 すなわち、「だれに何を売るか」という基本的な 「戦略」 の適切さで決まります。

この「戦略」を決めるのは経営者ですから、
儲からないのは経営者の責任だと言えます。

ただ、収益を上げる鍵となる「競争力」は、
戦略が書かれた分厚い中期経営計画書や本社の会議室からは
生み出すことができません。

戦略を確実に実行できる

「現場」(オペレーション)

こそが「競争力」を生み出す。

ですから、経営者としては、
適切な「事業立地」を選択すると同時に、
現場を強くするための仕組みづくりが求められるわけです。

さて、このことを深く理解している経営者のひとりが、
昨年、ドトールと経営統合を果たした

「ドトール・日レスホールディングス」

の会長、大林豁史(ひろふみ)氏です。

日本レストランシステムが運営する主力業態としては、

「洋麺屋五右衛門」「にんにく屋五右衛門」

が有名ですよね。

大林氏によれば、
毎日店舗ごとの成績表とにらめっこし、
赤字の店がどうやったら儲かるようになるかを
四六時中考えているそうです。
(日経ビジネス、2008/01/21)

でも、各店舗の売上ノルマがあるわけではありません。
営業成績を店長に問うこともありません。

そもそも店長自身が、
自店の営業成績を知らないのだそうです。

大林氏は、

“店の営業成績が振るわないのは店長など店舗スタッフの
 せいではありません。赤字は、出店や業態を決めた本部の
 戦略部門の失敗であり、私の失敗です。
 店舗スタッフは本部が定めたちゃんとしたことをきちんと
 やればいい”

と述べています。

赤字は、本社、つまり経営者の戦略上の失敗だから、
どうしたら挽回できるかを大林氏自身が考えているんですね。

では、大林氏は現場をどうやって評価しているかというと、

「本部が定めたモデルケースにどれだけ近づいたか」

だそうです。

「モデルケース」の詳細は不明ですが、
現場のオペレーションを最適化するための標準的な仕様、
たとえば、食材の量や調理方法、接客方法などのことだと
思われます。

端的にいえば、

「成功パターン」(=マニュアル)

のことでしょう。

すなわち、同社の店舗では売上という

「結果」

ではなく、現場のオペレーションという

「プロセス」

がどれだけ理想に近い形で実行できているかを
評価しているのです。

よく考えてみれば、
きちんとした商品・サービスが提供できてこそ、
結果としての売上がついてくるわけです。

ですから、売上目標を現場に押し付けて、
ケツをたたくだけの本部は戦略思考に欠けていますし、
現場側としては、売上げのために不正だって何だって
やるしかないということになりかねませんよね。

多くの会社では今でも、

「売上目標」

に基づく管理(評価)が主流でしょう。

ドトール・日レスホールディングスのように、

「成功パターン」(モデルケース)

をどれだけ着実に実行できているかという

「プロセス目標」

に基づく管理(評価)の重要性を理解しているところは、
まだまだ少ないのではないでしょうか?

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松尾 順

有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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