​貧しさという幻想：敗北主義の勝ち逃げの道

残念ながら、もう生まれた時点で、君は負け組だ。勝てないし、引き分けにさえできない。セレブ連中にあれこれ見せびらかされるだけ見せびらかされて、連中を全力で追いかけてみたところで、君は絶対に追いつけない。運と才に恵まれた、先行するセレブ連中が、振り返ってニヤっと笑うだけ。スタート時点のハンデが大きすぎる。たとえ死ぬほど努力に努力を重ね、かろうじて成り上がってみたところで、結局、君は仲間に迎え入れれてはもらえまい。

こんな世の中、まちがっている。たしかに、そうだ。だが、大河の流れは小石を投げても変えられない。君がいくら不平を言ってみたところで、だれも聞いちゃいない。せいぜいまた善人面の別の悪人に、いいように利用されるだけ。奴隷解放運動のように数百年がかりで命を投げ打つ同志が数百万人もいれば、世の中も変わるかもしれないが、どのみち君が生きている間には、どうにもなるまい。

だから、こんな時代のこんな国、ここにいるだけで失敗だ。この先、生きていたって、いいことなんか何もないよ。いよいよただ国だか企業だかセレブだかに搾り取られ続けるだけ。良い仕事も無いし、結婚も家族もできない。むだに年を取って、やがて体を壊し、死んでいくだけ。もう諦めて、「来世」にでも期待したほうがまし。なのに、なんで毎日、毎朝、満員の通勤電車で人生をすり潰す？ やりたくもない仕事で、体や心を痛めつける？ 明日、喰うカネのため？ で、喰って生きて、どうするの？

よく考えてみろ。それって、連中のワナだぜ。テレビだろうと、ネットだろうと、メディアなんて、しょせん要りもしないモノを売りつける手段だ。ほんとに君はタワーマンションに住みたいか？ ボジョレーヌーボーが飲みたいか？ 強欲に君の血を吸う悪魔のようなマネキン女やフシダラ男とつきあいたいか？ そんなところで、そんなもの飲んで、そんな相手と、これから先、ずっとやっていける、やっていきたいと、本気で思うのか？

騙されるな。街中に住まず、モノも買わず、だれかと付き合おうとしなければ、そもそもそんなにムリをして働かなくてもいいんじゃないのか？ どのみちそんなに働いたところで、負け組の君は、やっぱり都心には住めないし、モノは買えないし、だれかと付き合ったりもできないんだぜ？ なのに、いったいなにをやってるんだ？

そりゃたしかにお世辞にもきれいとは言えないが、地方にいけば、廃屋なんかいくらでもある。景色もきれいだ。散歩して、写真でも撮って、文庫でも読んで、ニコニコしていれば、モノなんかそうそう買わなくたって、近所の世話焼きさんが、あまった野菜だのサカナだのをくれる。もちろん、そうおうに村の仕事や年寄りの手伝いもしないといけないが、みんなもヒマだから、話相手には困らないし、いろいろなことも教えてくれる。それどころか、君と同じように、都会暮らしが向いていない、しょーもない女の子や男の子を紹介してくれるかもしれない。美男美女ではないかもしれないが、それが君にお似合いで、力を合わせて暮らせれば、それでいいじゃないか。