日本を代表する企業がその存続を危ぶまれたり、外国企業に身売りといったニュースは、もはや珍しくなくなりました。企業が別法人に買収される時、その人員がどうなるかは大きな問題です。特にシャープの買収においても40代以上の雇用が危ぶまれるなど、正にキャリア危機を考えざるを得ません。
そのために必要な3条件があります。
その1「業績把握」
自社の業績を把握していますか?営業関連業務であれば、自分や自課自部門の売上や営業利益などは常時把握しているかと思います。自分の業績評価以外の目的で、そうした経営数値を見ているでしょうか。上場企業であればIR情報を通じ、より正確な実態が把握できます。
その2「人間関係」
どんな組織でも、中年になるまでいれば、ただ仲良しだけでやっていくことはできません。しかしだからといって自己主張、自分の都合やメリットしか顧みない姿勢では、このような雇用危機の際に致命傷を負う可能性があります。大嫌いな人間が社内に一人二人はいるとしても、圧倒的多数を占めるであろう、敵でも味方でもない中立者としっかりと関係性を築くべきです。自分のセクションの都合ばかりではなく、先方の都合であってもそこで権利主張するのではなく、可能な範囲でWinWinの関係性を社内において築くことはきわめて重要です。
その3「トランスファラブルスキル」
ポータブルスキルなどと呼ばれることもありますが、英語では「Transferable Skills」といいます。会社が傾く運命に、個人ができることは限られます。どれだけ頑張っても、会社が無くなってしまう事態まで行く可能性は誰にもあります。そんな時に役立つのが、その企業リソースに頼る属地的能力ではなく、個人が持っている能力です。いわゆるつぶしが利く能力は、サバイバルの根本です。
・視野拡大は会社員生命を救う
田中角栄は、政権取りの戦略として「中間地帯論」を提唱し、敵でもない、味方でもない中間地帯にいる人たちに、いかに好意を持ってもらえるかを重視しました。中間地帯獲得の重要性は毛沢東の革命戦略でも触れられています。会社のような一つの組織に長くいると、人間関係も固定化したり、組織内において固まってしまう傾向があります。
しかし会社という組織自体が無くなってしまう可能性のある環境下では、常に会社の中であっても、外であっても、普段の自分の周りとは違う部分に目を向ける必要があります。それは強く自らが意識しなければなかなか接点はありません。高いお金を払って外部の勉強会や資格セミナーなどに出ずとも、通常業務と関係ない用向きについて、それを邪魔とか仕事の妨害と取らずに、自らの世界を拡大する機会ととらえてはどうでしょう。
普段接しない人たちが直接ご自身を助けてくれたり、アドバイスをくれるという意味ではありません。そういう可能性だって当然あり得ますが、そのような短期的なリターンやメリットではなく、自分がいる普段の環境と違う場所に、積極的に自らを置くことで、確実に視野は広がります。自社内の行事や全社プロジェクト、そこまでいかないレクリエーションであっても良いのです。実は身近なところに、キャリア観を広げてくれる、視野拡大のチャンスがあります。
中年が危機
2016.02.02
2016.02.17
2016.03.16
株式会社RMロンドンパートナーズ 東北大学特任教授/人事コンサルタント
芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。