シリーズ「中年が危機」その4 キャリアの危機3「キャリアカウンセリングから見えてくるもの」

2016.04.12

組織・人材

シリーズ「中年が危機」その4 キャリアの危機3「キャリアカウンセリングから見えてくるもの」

増沢 隆太
株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

中年が危機シリーズはキャリアだけでなく生活、健康、人生についても触れたいと思っているのですが、わりと「中年のキャリア」シリーズが反響をいただいているので、もう一回だけ書きます。厳しい話ばかり書いていますが、それでは中年にとって、そうしたキャリアの危機への対応策はあるのでしょうか?

・転職への誘惑
会社員をやっていて、一度も退職転職を考えたことが無いという方、いたら相当な変人だと私は思います。私のように4回も5回も転職するのもどうかと思いますが(ただし独立してからの兼業職務も含む)。つまり一つの会社社会にいれば良いことも悪いこともあるのが当然で、また組織である以上人間関係に根を置くトラブルや不満は絶対に避けられません。

そんな時にふと会社辞めようか?とか自分がトップに立って独立しようか?などと思うのは、きわめて健全かつ自然な感情です。ただし当然家族など自分一人で生きている訳ではない人の場合、「思う」のと「行動する」のは全く別物です。

再就職支援の業務でキャリアカウンセリングをしていますと、転職について相談されることが非常に多いのですが、若くして、できれば20代、遅くとも30代前半に一回は転職している人ですと、40代であっても適応性が高い方は割と多くいます。しかし40代になるまで一度も現在の会社以外経験が無いという方は、現実的には相当な難しさがあります。

仕事というのは単に業務だけを行うものではありません。職場環境、嫌になった人間関係含むさまざまな要素が入り混じった環境全体の変動が転職です。それに耐えられるかどうかが試されます。


・独立と資格「幻想」
厳し過ぎる表現かも知れませんが、これまたキャリアカウンセリングで見えてくる意外なほど多いものが資格幻想です。今いる会社では評価もされないし、嫌な上司にこき使われ、めんどくさい人間関係に汲々とするくらいならいっそ資格を取って独立しようという思いを持つ人は非常に多くいます。

でもちょっと待って。その資格、本当に頼りになるのですか?????
中年世代くらいまで、「就職(転職)には資格が必要/有効」などと言われたかと思います。そうした親に育てられた今の大学生も、いまだに「資格が必要」のようなことを言ってくる子が少なくありません。

「資格が必要/有効」という方のキャリアカウンセリングの際お尋ねするのは、「ではその資格でいくら稼げますか?」とお聞きして、明確な答えがある人には会ったことがありません。そこそこ仕事に役立つであろう資格ともなれば、その準備や講座に通う費用だけで数十万、50万を超えるものも少なくなく、さらに準備日は1年以上かかるものもザラです。

あえて乱暴な表現をしますが、誰でも取れるような資格に価値などある訳がありません。その資格がなければ業務ができない業務独占資格(弁護士、医師、行政書士など資格がないと業務を行えないもの)であれば、ある程度得られる収入は読むことができます。他にも名称独占資格(介護福祉士、調理師など)、必置資格(旅行業務責任者、宅建など)難易度と収入は普通、直結します。

必置資格などは、必置であれば有効でも、他にも持っている人がごろごろいたり、そもそも必置でない環境であれば何の意味もありません。まして仕事に直結しないような資格であれば、いくら費用をつぎ込んだところで何の評価にもならないのは当然で、キャリア観を持たずに資格だけを追うというのは仕事に結び付かない資格は正に幻想なのです。


・青い鳥は身近にいる?
再就職支援ではキャリアの棚卸というものをしていただきます。それほど複雑なことではなく、誰でもできることですから、連休などまとまった時間が取れる時はどなたも挑戦されてみてはいかがでしょうか。

つまり「履歴書・職務経歴書を書いてみる」ことがキャリアの棚卸になるのです。特に転職をしたことが無い方の場合、こうした書類を書くのは相当苦労すると思います。どの程度まで掘り下げるのか、いつまでさかのぼるのかということも含め、ご自分の人生を見直すのがキャリアの棚卸です。決まりはありません。

ただ、キャリアカウンセリングなどでお勧めするとすれば、やはり実際に転職に使えるくらいまで精度を高めた書類にできることをゴールとしてはどうでしょう。自分史を書く訳ではなく、必ず相手=採用企業があるという前提で作るなら、当然職務経歴書を何ページも書く訳にはいきません。通常はできれば2ページ以内に収まるようにするのが良いと思います。

とても2ページでは収まらないという方は、まだまだ職務を棚卸せていないのです。単に何をやったかという記録ではなく、その業務がどんな事業目的、ポジショニング、成果評価だったかを「わかりやすく」表現することに意味があります。だから「棚卸」なのです。

たいへん面倒だと思いますが、学生のES指導や面接指導と全く同じで、最初の苦労はやればやるほど軽減されていきます。一番最初の作成が最もきつく、苦労します。それをブラッシュアップして行く過程で、何かが見えてくることがあります。それこそがご自身が培ってきた真のキャリアです。自分では普通、何のとりえもないと思っていたご自分の職務経歴ですが、中年という時間を経たことにより、職務名や役職とは別に通貫する役割や機能が見つかることがあります。それこそがくだらない資格などよりずっと評価される宝になります

青い鳥は実は自分の家にいたという発見があるかも知れません。

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増沢 隆太

株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。

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