問題社員と思われている社員の中には、アスペルガー症候群の人も含まれているかもしれない。その症状がおよそ確認できてもどのように対応していいのか分からない企業もある。それまで問題社員として対応してきて、アスペルガー症候群の可能性があると気づいた瞬間、人事も、彼らのそれまでの謎めいた言動が分かり、謎から解放されることになる。しかし、本当の解決策にはまだまだいたらない現実がある。
「課長とその後、いろいろ社内でのやりとりを確認しましたが、確かにアスペルガー症候群の障害者かもしれませんね。おそらく十中八九そうでしょうね。でも、その対応が難しいなぁ。」と言うのが印象でした。また、「彼って、これまで3回転職を経験していましてね、1社に3年もなっていないみたいですね。前職でも、左遷されて転職していますからね。」
会社の対応
「本人に、専門医への診察を勧めることには、抵抗があります。診察したけど、アスペルガーではなかったら、会社としてどのように責任を取っていいか、また、対応していいか非常に苦しみますからね。なので、診察を勧めることはしないことに決定しました。その結果、もし、本人から訴えられたら大きな問題ですよ。」
「これって、決定なのですか?」と聞くと、
「そうですね。課長の上司の部長とわたし、社長の3人で決めました。彼に十分に対応できるだけの時間とエネルギーが、弊社にはありません。この年末の締めで忙しい状況で、これ以上、現場の課長の成果が出てこない状況では、課長の評価にも影響が出てきます。実際、数か月の成果は出ていませんし、課長の責任も多少はあるかと思います。外資系企業なので毎回のパフォーマンスは大切なんですよ。」と、説明を受けたのです。
この説明を聞きながら、自分の、会社のパフォーマンスを、目の前の成果を出すことに懸命になっている姿と、ディズニー映画の「カーズ」の場面がかぶってしまった。主役のマックウィーンが全米大会のピストンカップで優勝することが唯一の目標で遣り甲斐だった。その彼が、ゴール寸前で優勝することより、もっと大切なことを選択した。感動的な映画のひとつです。
でも、正義は何かが分かっていても、いざ実行するとなるととんでもなく勇気が必要となり、しり込みする。
この企業のホームページをもう一度、読み返してみると、「人を大切にする企業」と紹介している。人事コンサルタントとしていろいろアドバイスはできるものの、最終的に判断し、決定するのは相手企業であるし、責任も相手企業にある。
人事部長からは、「彼には、残念だけど、退職をしてもらう方向で進めたいと思っています。その間は、課長にもお願いして、彼には曖昧な指示を出さず、簡単な作業を与えるように言いますよ。」と、言う説明を受けた。
企業の中には、アスペルガー症候群の診断を受けていない障害者は他にも多くいると感じる。本人も「なぜ仕事が上手くいかないのか?」苦しんでいるのではないかと思う。
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提供会社: | 戦略人財コンサルタント |
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対象: | 製造、医療機器・医薬品、IT、金融、小売・卸業の日本企業、外資企業 |
時期・期間: | いつでも受付ております。 |
地域: | 日本国内全域、海外(北米、アジア、ヨーロッパ)に対応しています。 |
実績数: | 人事部門の変革支援は、52社(2015.12時点) |
費用: | 見積をご依頼ください(大手コンサルティング企業の半額程度です) |
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2009.02.10
2015.01.26
戦略人財コンサルタント 代表
人事の役割は、グローバルでは2005年あたりから大きなパラダイムシフトが始まりました。それは、社員の自己実現を達成させる仕組み、制度、支援を人事が行うことです。社員が安心して会社で最大のパフォーマンスを発揮し、それが経営目標の達成、さらには事業発展に貢献できる仕組みを人事が担当する時代になったのです。 人事機能を運用管理するだけの役割は、グローバルの優良企業にはもはや1社もありません。 このような人事の役割の変化と事業の発展は等しく関係しています。日本企業の真のグローバル化、世界で戦う人材のマネジメントを行う人事部門の再構築の支援をさせて戴いております。