組織が大きくなるときおこりがちな「型にはめる人材育成制度」に企業における人材育成の行き詰まりを感じる。強い組織作りには多様性を活かした「はみ出す人材育成」を。
このやり方を続けていると、能力があり、決まったマス目に入りきれない優秀な人材を評価することも、育てることもできない。中身がスカスカでも形だけマス目にはまる研修受講や資格取得を根気よく続ける人間だけが残る。言わば中身がからっぽな同じ形と大きさのブロックで、組織を作っているようなものである。強い組織になるはずがない。
皇居東御苑で石垣を見ていたとき、意外とばらばらな石でできていることに気が付いた。さまざまな大きさ、色、形を実に巧妙に組み合わせて、石垣は強固に組みあがっている。
ほんとうに強い組織を作りたいなら、優秀な人材を育てないなら、ばらばらな石で強固な石垣を組み上げた古の職人を見習った方がいい。大きな組織ならたいていはピラミッド型組織になっているのだから、一人の管理者が見る部下の数SPAN OF CONTROLをきちんと設定すれば、一人一人と向き合うことはさほど重荷にならないはずである。
研修受講や資格取得の情報を集めてマトリックス表の塗りつぶしに終始するのではなく、きちんと部下の顔を見て話をし、マトリックス表に入りきらない能力やスキルをきちんと見つけていくという地道な努力を積み重ねていけばいい。一つ一つのブロックの形は多少でこぼこになるし、組み立ては難しくなるけれど、それでもきっとうまく組みあがる道がある。本気で組織を強くしたいのならば、形式要件のマトリックス表からはみ出す人材をこそ育てるべきなのだ。
そして、人材育成部門には、現場がきちんと意図した運営をしているかどうかまでをトレースする義務がある。組織の問題の多くは、人は他人の思い通りには動かないということをいかに理解し、それを踏まえたふるまいをするかにかかっているものなのである。
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