組織が大きくなるときおこりがちな「型にはめる人材育成制度」に企業における人材育成の行き詰まりを感じる。強い組織作りには多様性を活かした「はみ出す人材育成」を。
どこの会社にも、なんらかの人事評価制度、人材育成制度というものはあるだろうが、ほんとうにうまく行っている組織は実はとても少ないように思う。
ある会社では、人事評価を丸ごとアウトソースし、現場の仕事とはほぼ関係なく、論文とプレゼンで昇格が決まるという割り切り具合だった。この評価制度に合わせた人材育成なら、論文の書き方指導やプレゼン技法があればよい。
ある会社では、現場を知らない親会社からの出向社員が机上の知識だけを頼りに組み上げた年数×スキルのマトリックス表で人事評価がなされていた。これもまた、評価制度に合わせた人材育成を行うためには、とにかくそのマトリックス表にあるスキルを客観的に示すための「研修受講」や「資格取得」などの「形式要件」を整えることに終始するしかできなくなる。
なぜこのような制度になるのだろうか。組織が大きくなると、人々を同じ形にそろえたがる人が出てくる。同じ大きさ、同じ形のブロックにすれば組み立てが簡単だからだ。管理が簡単だからだ。
当たり前だが人間はみなちがう。知識や経験のちがい、向き不向き。あるいは、意欲や学ぶスピード。育児や介護や趣味などのワークライフバランスも人それぞれである。
入社3年目で、この研修とこの研修を受けてこの資格を取ればマス目一つ分クリア。入社5年目で5人のチームで売上○○円の仕事を3件こなし、ひとつレベルが上のこの資格を取ればマス目一つ分クリア。そんなマトリックス表を塗りつぶすような、単純なものであるわけがない。
もちろん組織というものは、大きくなればなるほど人が増え、個々に合わせた対応は困難になる。すべての社員に適用できるマトリックス表を作ることは不可能だ。なるべく汎用的に作ろうとするのが人事側の思惑だろう。要するに、マトリックス表はあくまでも評価の指針であって、評価のすべてにすべきではない、というだけのことなのだ。
けれど、実際に現場に落ちたとき、手を抜く管理職は、自分自身で人と相対して評価することをせず、マトリックスになった点取り表に合わせてマス目を塗りつぶすだけの運営をする。そのマス目の中身が、スカスカだろうがパンパンだろうが関係ない。
例えば、研修は「受講」したことだけが重要で、その知識を身に付けて理解することで、現場仕事の何ができるようになっているかは問われない。勉強しなくても適当な経歴と登録料や更新料を払えば取得できる資格をとってしまえば、実力は問われない。とにかくマス目を埋めていきさえすればいい。
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