川崎の中学生殺害事件で責められるべきは誰なのか

画像: J-Castニュース

2015.05.12

ライフ・ソーシャル

川崎の中学生殺害事件で責められるべきは誰なのか

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

痛ましい事件から汲み取るべき本質は少年犯罪の凶悪化ではない。子供たちを守るための仕組みを崩壊させ放置してきた私たち大人と政府の責任である。

クラスメートに人気があったという上村君が学校に行かなくなった理由の一つには、(たとえストレートないじめがなかったとしても)そうした家庭の経済事情から来る居心地の悪さがあったのかも知れません。例えば文房具などの持ち物を十分揃えられない、クラスメートが話す「○○へ遊びに行った」などという自慢話が嫌だ、給食費などを払うことが母親にとって大変だと子供心に感じた等々、色々と考えられます。

そうした事情を考えると、上村君がグループから抜けたがっていながら果たせなかったのも、肩を寄せての一家の暮らしを脅かされかねない事情があったのかも知れません。アパートに押し掛けて大声で呼び出すというのは、弱みに付け込む卑劣な手口といえます。そして「自分さえ我慢すれば」と考えるのは、いじめや暴力に遭っているこの年頃の子供にはよくある思考パターンです。

当然ながら、一番悪いのは上村君を殺害した犯人です。まだ断定すべきではありませんが、その可能性が一番高いのは少年Aおよび当夜一緒にいた少年たちです。他の2人の少年の証言が正しいのなら、少年Aは上村君を自分の支配下に置くために暴力を使い、最後にはリンチがエスカレートして殺してしまったことになります。もしそうなら彼は厳しい裁きを受けるべきです。

しかし、では彼ら不良少年たちだけが悪いのでしょうか。そんな単純な話ではないと思えるのです。上村君が殺害されてから3ケ月近く経ちますが、事件現場には今も献花が絶えません。そこで上村君の冥福を祈る人達が何人もいます。彼らは上村君の親戚でも学校関係者でもなく、生前の上村君を直接知っていたわけでもありません。単に付近の住民だということです。

でも彼らが共通して言っていたのは「不憫で仕方ない。何かしてあげられなかったのかと悔しい」という言葉です。つまり、上村君を救ってあげるようにコミュニティが機能しなかったことに、やり場のない思いを抱いているのです。住民たちのこの優しい気持ちが持続すれば、きっとこの一帯には将来、素晴らしいコミュニティが成立していることでしょう。

でも冷静になって考えてみると、コミュニティにだけ期待するのもおかしいと思えます。そもそも母親が朝から晩まで働いていながら貧困から逃れられない先進国・ニッポンって一体何でしょう。

それこそ、人間らしい暮らしを営む最低限の人権が保証されていないということですから、政府が責任を果たしていないということではないでしょうか。本来すべきは、シングルマザーなど、不当な条件で働く人たちの労働環境を改善するように持っていくことのはずです。それによって経済的に厳しい状況にある親でも子どもを守ることが可能になるのです。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

「世界的戦略ファームのノウハウ」×「事業会社での事業開発実務」×「身銭での投資・起業経験」。 足掛け38年にわたりプライム上場企業を中心に300近いプロジェクトを主導。                     ✅パスファインダーズ社は大企業・中堅企業向けの事業開発・事業戦略策定にフォーカスした戦略コンサルティング会社。AIとデータサイエンス技術によるDX化を支援する「ADXサービス」を展開中。https://www.pathfinders.co.jp/                 ✅中小企業向けの経営戦略研究会『羅針盤倶楽部』の運営事務局も務めています。https://www.facebook.com/rashimbanclub/     

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