実際にCS向上やサービス向上に取り組む際には、「一体、何から手を付けたらよいものか」と戸惑ってしまうことも少なくないはずです。そこで今回は、明日からすぐに具体的な取り組みを始めるための王道について、サービスサイエンスの観点でご紹介します。
この3つの事前期待のタイプを意識して、相談に来たお客様に保険に加入してもらうにはどのように対応すべきかを考えてみましょう。
■事前期待の違いで顧客対応は180度変わる
保険内容については「できるだけ安心感のある保険がよい」、予算については「納得できれば高くてもよい」というお客様は、納得できれば高い保険に入っていただける可能性があります。保険会社としては、ぜひこのタイプのお客様から契約をいただきたいものです。
ただし、このタイプのお客様にも、相談の進め方への事前期待には違いがあります。「自分で納得して決めたい」というお客様には、相談窓口のスタッフができるだけ丁寧な説明と小まめなQ&Aを繰り返すことで、とことん納得していただく必要があります。
一方で、「考えるのが面倒なので、自分にふさわしい保険をお勧めしてほしい」というお客様に対して、同じように丁寧な説明と小まめなQ&Aをしてしまうと、「やっぱり保険って面倒くさい」と思われて帰られてしまうおそれがあります。そこでお勧めしてほしいお客様には、スタッフがお客様のご要望を正しく把握したうえで、ドンピシャな提案をしなければなりません。
このように、保険の内容や予算感に対する事前期待が同じお客様であっても、相談の進め方に対する事前期待の違いによって、相談窓口の現場で行うべき努力は180度変えなければならないことが分かります。
また、「そこそこの安心でよいから、できるだけ安い保険に入りたい」というお客様もいます。その中で「考えるのが面倒なのでお勧めしてほしい」という事前期待のお客様がいたら要注意です。例えば自動車保険の場合、自動車が事故を起こした際に「そこそこの安心で安い保険」は適用範囲が狭いため に、事故内容によっては保険が下りないことがあります。すると、このお客様は、「お勧めされたから契約したのに、保険が下りないとはどういうことだ!?」と、トラブルやクレームになる恐れがあるのです。
つまり、こういった「そこそこの安心で安い保険」を求めていて、でも「考えるのが面倒だからお勧めしてほしい」という事前期待のお客様に対しては、相談窓口のスタッフは真っ先に「自分で決めていただく」ように誘導しなければなりません。そして、もしどうしても自分で決めていただけない場合に は、契約は取らないという意思決定も必要になるかもしれません。
■現場がピンとくる「お客様の定義」であるかどうかがカギ
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2020.03.05
2015.07.10
松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。 代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新