画像: alan jones

2015.08.20

経営・マネジメント

新規事業における素朴な疑問 (2) ”多重兼務”担当者が多過ぎる

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

新規事業に取り組む企業の行動パターンに関する素朴な疑問シリーズ、その2回目として取り上げたいのは推進体制面。関与する担当者が幾つものテーマを抱える「掛け持ち」度の高いメンバーばかりのため、プロジェクトの質とスピードが劣化するという課題である。

それに対し幾つも兼任しているメンバーばかりのプロジェクトチームでは、精々1週間に1度の打ち合わせで各自に振った「宿題」の結果を確認し、次にどうするかを考える、といったペースになりがちなため、進捗は4~10倍程度遅くなる。弊社がお手伝いすることでそのペースを倍以上に引き上げることはできるが、それでも兼任メンバーばかりのプロジェクトというものは厄介だ。

どんな新規事業プロジェクトにも、クライアント企業メンバーしかできない部分が厳然と存在する。幾ら外部コンサルタントがしゃかりきに調査・分析しようとも、兼任者ばかりのクライアント企業メンバーが定期打ち合わせまでに「宿題」をきちんとやってこないことが繰り返されるとプロジェクトの進捗はままならず、スケジュールや課題担当の変更が繰り返され、非常に効率が悪くなることは間違いない(もちろん小生のプロジェクトでは、そんな事態に陥らないようきっちり仕切らせていただきますが)。

中小企業であれば、こうした「専任化は無理」といった事態はある程度は仕方ないかも知れない。そもそも人材の層が薄く、新規事業を担当させる人材がもともと少ないからだ。ただし、この場合、新規事業のテーマ数も絞られるというのが現実だから、実際には「掛け持ち」度が極端に高くなることもないと思える。

でも小生が問題視しているのは、むしろ大企業のケースだ(現実に弊社が支援している対象の大半が大企業なので)。なまじ企業体力があるせいかテーマを絞り切れておらず、むやみに新規事業テーマが多いため、担当者の「掛け持ち」が減らないのだ。

不透明さを増す経営環境ゆえに、「保険」として常に新規事業テーマを開発していないと不安になる企業経営者の心理も強く働いていると小生は感じている(この問題を指摘したのが弊著「フォーカス喪失の罠」<日経BP企画>)。

もう1つ、企業側が「掛け持ち」を増やしてきた理由がありそうだ。それは「失われた20年」の間、じりじりと人減らしを進めてきた結果、新規事業を担当させることができそうな人材の絶対数が減っているという観点だ。少なくない企業でそうした理由を聞いている。

しかしこうした「掛け持ち」度合いが高いままでは、先に挙げた不具合な点は何ら改善されない。どうすれば下げることができるだろうか。大きく2つの側面で手を打つべきだ。

まずひとつには、優先的に検討する新規事業テーマを絞ることだ。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

「世界的戦略ファームのノウハウ」×「事業会社での事業開発実務」×「身銭での投資・起業経験」。 足掛け38年にわたりプライム上場企業を中心に300近いプロジェクトを主導。                     ✅パスファインダーズ社は大企業・中堅企業向けの事業開発・事業戦略策定にフォーカスした戦略コンサルティング会社。AIとデータサイエンス技術によるDX化を支援する「ADXサービス」を展開中。https://www.pathfinders.co.jp/                 ✅中小企業向けの経営戦略研究会『羅針盤倶楽部』の運営事務局も務めています。https://www.facebook.com/rashimbanclub/     

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