社会インフラを考える (4) インフラ維持に住民とICTを活用せよ

画像: TSUKUBA Vision

2014.04.02

経営・マネジメント

社会インフラを考える (4) インフラ維持に住民とICTを活用せよ

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

不可欠なのは道路インフラの維持管理コストの抑制であり、そのために必要なのは住民ボランティアと、優先度づけを判断するための点検の自動化・効率化だ。

前者は、他の公共インフラ(地域の寄り合い所や鉄道駅舎、公園など)の維持管理に関して既に一部の自治体で実施されている手段で、ある程度の有効性が認められている。

掃除や簡単な修理など、できることは地域住民が自ら行うというものだ。老朽化が進んで壊れかけているとか標識などが破損しているなど、問題がある外観部分をスマホで撮った画像データを役所に知らせてくれるだけでも大いに助かるわけだ。

ボストンでは”Citizens Connect”の名称で2009年から導入されている仕組みだが、その有用性に惹かれ、今やマサチューセッツ州の他の市・町に拡がっているそうだ。

http://www.cityofboston.gov/doit/apps/citizensconnect.asp

もう一つはより専門的な対策だ。優先づけを判断するためには、道路や橋梁などの施設の状況を日常的および定期的に点検する必要がある。その方法は国交省などにより定められており、従来は主に目視・打診に依存していたが、これをよりハイテク化することだ。

既に路面状態を保守車両に搭載した専用機器で撮影し、その画像データを解析するシステムは、道路建設や測量関係の民間業者各社から出されている。走行しながら道路を打診する専用車もあれば、道路において陥没の恐れがある箇所を、内部を破壊することなく診断する技術も進歩しており、さすがハイテクの国・ニッポンと感心する。

特に崩落時に引き起こされる問題のインパクトが大きい、橋・トンネルの老朽化を早期に把握できる手法の開発・確立が早急に求められている(日本では笹子トンネルでのパネル崩落事故の衝撃が大きかったようだ)。

例えば省電力型のセンサーを橋梁の幾つもの個所に設置することで老朽化の進行を自動的にモニタリングする仕組みや、非破壊で内部構造を診断できる中性子など光量子技術の研究や実証実験が進んでいる。そしてこれらにより計測されたデータを収集・解析するのにも民間のICT技術への期待が大きいところだ。

しかしいずれも難点がある。

まず画像データを収集するために保守車両を日常的に走らせる手間やガソリン代がばかにならない。範囲が限定される高速道路には有効だが、一般道路だと対象が広過ぎて効率的ではない。そもそもそんな高価な専用の測定・診断機器やシミュレーション・管理システムを導入する余裕は普通の地方自治体にはない。

むしろ先に触れた、住民からの通報を活発化する、通報があった箇所をより効率的に突き止める、といった部分での工夫を組み合わせることが求められそうだ。その上で、入手可能な範囲でハイテクをうまく活用することだ。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

「世界的戦略ファームのノウハウ」×「事業会社での事業開発実務」×「身銭での投資・起業経験」。 足掛け38年にわたりプライム上場企業を中心に300近いプロジェクトを主導。                     ✅パスファインダーズ社は大企業・中堅企業向けの事業開発・事業戦略策定にフォーカスした戦略コンサルティング会社。AIとデータサイエンス技術によるDX化を支援する「ADXサービス」を展開中。https://www.pathfinders.co.jp/                 ✅中小企業向けの経営戦略研究会『羅針盤倶楽部』の運営事務局も務めています。https://www.facebook.com/rashimbanclub/     

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