風が吹けば桶屋が儲かる。あいつらを儲けさせるつもりじゃなかったのに、という自嘲の声が…。
消費税の増税を経たこの時期、百貨店業界では業績の差が目立ち始めている。中でも業界首位の三越伊勢丹が好調だ。同社が発表した2015年2月の売り上げ確報によれば、全店合計の売上高が前年比106.2%、12カ月連続で前年を上回るなど順調のようだ。
実は、三越伊勢丹の経営自体はそんなに平坦ではない。激戦区である大阪・梅田に2011年5月にオープンした「JR大阪三越伊勢丹」は不振続きで、本年1月に売り場縮小が発表されている。旗艦店の一つである三越日本橋本店もぱっとしない。
それに対し非常に業績に貢献しているのが、もう一つの旗艦店、新宿伊勢丹だ。2014年3月期で見ると、前年比で10~15%の伸びで毎月推移しており(増税前の駆け込み需要の顕著な3月を除いても)、明らかに全体を引っ張っている。
その要因は何か。アナリストや報道向け資料ではリモデルのパークなどの施策が当たったことと、独自企画商品による品揃え強化で、来店客・買上客数・客単価が増加したことなどが並べられており、経営陣の誇らしげな顔が浮かぶようだ。でも、もし本当に同社のマーチャンダイジング能力がずば抜けて優れているのであれば、大阪での苦戦は腑に落ちかねる。
その伊勢丹新宿本店には昨年度、面白い事実が2つ発生した。
2013年3~12月の来店客数は前年同期に比べ約1割増と、高度経済成長期以来の伸び率を記録したそうだ。いくら景気回復とはいえ、この人口減社会において、他の小売企業からすれば驚愕・羨望の増率だ。
そして同じ時期、同店では案内パンフレットを手に取る人が増えたのだ。今年度は例年の倍以上の45万部と大増刷したそうだ。
これらが意味するのは、三越伊勢丹の経営者が主張するように、既存客が百貨店の施策につられて来店頻度を上げたというのではなさそうだ。むしろ、それまであまり新宿伊勢丹に来ていなかった新規客が押し寄せるようになった、ということだ。
ではどうしてそんな現象が起きたのだろう。勘のよい方はもう気付いているだろう。そう、東急東横線と東京メトロ副都心線が昨年3月に相互直通運転を開始したため、人の流れが大きく変わったのだ。
新宿伊勢丹が直結している新宿三丁目駅の1日の平均乗降客数は、東京メトロによると7万9000人(13年4~12月)と、前年同期比約5割増(!)だそうだ。新宿三丁目駅で乗り換える人、途中下車する人が一挙に増えたわけだ。
ではその人たちはどこから流れてきたのだろうか。それは渋谷だ。同じ時期、JR渋谷駅の乗降客数は激減した。41万2009人から37万8539人へと約8%も減ったのだ。19年連続で3位だったのに、2013年度は一気に5位に転落している。伊勢丹の新規のカード会員を分析すると、目黒区や品川区、大田区などの住民が目立つそうだ。
経営・事業戦略
2013.06.25
2013.06.19
2015.06.01
2015.04.10
2014.08.11
2014.06.11
2015.08.03
2014.04.21
2014.04.02
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
パスファインダーズ社は少数精鋭の戦略コンサルティング会社です。「新規事業の開発・推進」「既存事業の改革」「業務改革」の3つを主テーマとした戦略コンサルティングを、ハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/ 弊社は「フォーカス戦略」と「新規事業開発」の研究会『羅針盤倶楽部』の事務局も務めています。中小企業経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashimban/ 代表・日沖の最新著は『ベテラン幹部を納得させろ!~次世代のエースになるための6ステップ~』。本質に立ち返って効果的・効率的に仕事を進めるための、でも少し肩の力を抜いて読める本です。宜しければアマゾンにて検索ください(下記には他の書籍も紹介しています)。 https://www.pathfinders.co.jp/books/