顧客満足向上(CS向上)活動やサービス改革活動がなかなか上手くいかず悩まれている方が多いようです。こういった活動はどこでつまずくのか?そしてその対策は?このよく頂くご質問について、サービスサイエンスの視点も織り交ぜながら整理をし、活動推進におけるポイントを考えてみたいと思います。
具体的には、下記のように活動をなかなかスタートできないことがあります。
・活動を始めようとメンバーで集まってみたものの、何から議論をしたら良いのやら見当がつかない。
・色々と議論はしてみたものの、話が発散してしまって、結論が出ないまま終わってしまった。
・目指すべきビジョンは掲げることができたが、それを実現するために具体的にどんなアクションを取るべきかかが分からない。
・周囲を巻き込もうとしたが、どうも納得してくれなくて活動が始められない。
この原因は様々だとは思いますが、CSやサービスに関する活動で特に大きな原因が2つありそうです。
■活動開始の壁にぶつかる原因その1:サービスに関する価値感のズレ
原因の1つ目は、活動のテーマである「サービス」や「顧客満足」に関する考え方が揃っていないことです。
例えば、サービス改革活動をする場合、そのベースとなる「サービスの定義」についてメンバー全員が共通認識を持った上で議論ができているでしょうか?CS向上活動も同じで、「顧客満足の定義」について尋ねられて、サラッと答えられるでしょうか?たかが言葉の定義ですが、こういった活動の原点がズレていると、話が一向に噛み合わずに議論が進まなくなってしまうということがよく見受けられます。共通の価値観で活動を進めるということは極めて重要なのですね。
ここでひとつ、サービスサイエンスでの言葉の定義をご紹介します。例えば、「サービスの定義」は次の通りです。
「人や構造物が発揮する機能で、お客様の事前期待に適合するものだけをサービスという」
(*事前期待に合っていない機能の発揮はサービスとは呼ばない。余計なお世話や無意味行為、迷惑行為と呼ばれてしまう。)
この定義をメンバーで共通認識していれば、「お客様の事前期待を掴まなければ、サービスを提供することすらできない。」という価値観の基に、より具体的で効果的な議論を進めることができるようになります。
このように、「サービス」「顧客満足・CS」「サービス品質」「ホスピタリティ」「おもてなし」など、取り上げるテーマの言葉の定義や価値観について共通認識を持って議論を進める必要があります。
■活動開始の壁にぶつかる原因その2:問題の全体像が見えない
2つ目は、問題の全体像が把握できていないことです。
「顧客満足度が低い」や「サービスの売上が向上しない」「顧客が増えない」などの問題構造は非常に複雑で、実に様々な部署や機能の問題が絡み合っていることがほとんどです。通常、サービスに関する問題には200個以上の原因が潜んでいることが多く、その全体像を明らかにすることは簡単ではありません。しかし、問題の全体像を把握せずに議論を進めてしまうと、メンバーごとに重要だと思っている問題点がバラバラで、どこから手を付けたら良いのかが決められません。また、日々の対応に追われている現場を活動に巻き込む際に、納得のいく説明ができずに協力を得られないということもあります。活動メンバー全員が問題の全体像をしっかりと理解した上で、活動を進めなければなりません。
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サービスサイエンス・CS向上・サービス改革・品質向上
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松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。 代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新