仮説の「検証」と「修正」を繰り返すサイクルをいかに早くできるか。その「スピード」と「大胆さ/割り切り」が無駄足を減らし、検討プロジェクトへの信頼度を増す。
また、国が決めたガイドラインにさえ沿ってさえいれば、あいまいな「品質の違い」はあまり差別化要素にならないのが実態だった(お役所の担当者はそこまで気にしないため)。事実、競合のメーカーは技術的には今ひとつと同業者からは見られていたが、実績の多さが評価され、高い市場シェアを維持するという好循環を保っていた。ただ、メンテナンス周期が変わってくる、クライアントのある技術は高く評価されていた。
一旦はそうした「○○技術による耐久性」をアピールし差別化する戦略を立てたが(修正仮説の構築)、改めて市場関係者に打診してみたところ(修正仮説の検証)、その反応からは「決定的な差別化点とまでは言えそうにない」と認めざるを得なかった。プロジェクトとしては煮詰まり気味になったが、ここで足踏みしていては時間がもったいない。
そこで、クライアントとコンサルタントの合同で数度にわたってブレインストーミングを行い、打開策を模索した。出た結論は、「ビジネスモデル自体を思い切って転換し、強みである加工素材を競合業者にも提供することで事業のすそ野を拡げる」というものだった。
この大胆な戦略転換がうまくいくのか、その仮説検証は難しかった。一部の競合に対し非公式に受け入れ意欲を打診し、特に口の堅い一部代理店に(代理店全般からの反発が大きくならないかという)相談をし、社内的に規模拡大によるコスト低減が収益向上に結び付く効果の度合いを検討した。検証の結果は、とりたてて大きな問題はなく、今の中途半端な状態よりは将来的に事業が成長する可能性が高いという結論に至ったのである。
この事例では、事業担当者の割り切りが素早く、社内外の関係者への説得も手際がよかったため、意外なほど反発が少なく、大胆な方向転換に成功した。(実質的に)新規事業ならではの身軽さが功を奏した側面もあったが、「仮説構築-検証」のサイクルが速かったからこそ無駄足が少なく、プロジェクトへの信頼度が上がったことは間違いない。
(本記事は2013年11月28日に掲載されたものを再編集しております)
経営・事業戦略
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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
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