中高年やシニアが考えるべきなのは、エイジングによる価値である。(NPO法人「老いの工学研究所」のHPに掲載したコラムを転載しました。)
“アンチ・エイジング”は、中高年やシニアの居場所探しのようにも見える。自身の年相応の価値を見出せないので、今までと同じように若者と一緒に振る舞おうとする。年の功を発揮する自信がないので、若者と同じ役割を果たすしかなく、そのために若々しく見えようと頑張っている。エイジングを果たした者としての居場所が分からず、今までの場所に居座り続けようとしているように見えるのである。そんな、若さを若者たちと競おうとするようなアンチ・エイジングは、若い世代にとって鬱陶しいものでしかない。肉や酒や楽器に古いものの価値があるように、人にも年を取ればとるほど価値が出てくる部分がある。本来はそこを自覚し、磨き続け、異なる役割を果たすことが、世代間が協調する道というものだろう。
今どきのアンチ・エイジングは、周囲からは「期待はずれ」であり、若い世代からは「鬱陶しい」ものとなっている。中高年やシニアが考えるべきなのは、アンチ・エイジングではなく、エイジングによる価値である。エイジング・ビーフになるか、安売りの輸入牛肉になるか。長期熟成されたウィスキーになるか、安売りウォッカになるか。十分にエイジングされた良品になるか、技術のない国の激安家電になるか。それを選ぶということだ。
高齢社会
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NPO法人・老いの工学研究所 理事長
高齢期の心身の健康や幸福感に関する研究者。暮らす環境や生活スタイルに焦点を当て、単なる体の健康だけでなく、暮らし全体、人生全体という広い視野から、ポジティブになれるたくさんのエビデンスとともに、高齢者にエールを送る講演を行っています。